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中長期的には円安が明白に

聞こえ始めた円安の足音―円安要因は構造的

2012.12.10

アセットベストパートナーズ
代表取締役社長 中原 圭介

新進気鋭のエコノミスト・中原圭介氏に、今後の円相場の行方を分析してもらった。海外投資を行うには足元の相場の動きだけでなく、中長期的で構造的な相場要因に目を凝らす必要がありそうだ。


足元の円安の動きは限定的だが

米国の金融緩和政策が強力なこと、欧州経済に対する不安感が収束していないこと、新興国の円買いなどの要因から、足元では円安への動きは限定的だ。

ただし、今の日本の構造的な貿易赤字と経常黒字の縮小傾向が続けば、円安圧力は徐々に強まるだろう。いつかは断言できないが、2020年までには経常収支が赤字に転じる可能性が高い。

これは今後のエネルギー政策とも強く関わる。米国から安いシェールガスを輸入するなどの対策がとられず、今のまま中東から価格の高いガスを輸入し続けるのであれば、2015年には経常赤字に転じる可能性がある。エネルギー安全保障の問題を解決しないと、日本は構造的な経常赤字国に転落してしまうだろう。

また、見落としがちなのが医療費だ。去年の貿易赤字2.5兆円のうち、1.3兆円は医薬品の赤字が占めている。抗がん剤やその他の難病の治療薬は、欧米に比べて日本の製薬会社が後れを取っている。欧米からの医薬品の輸入急増が、慢性的な貿易赤字を誘発している。これから高齢化が進み先進医療が発展することで、これは構造的な貿易赤字要因になりうる。

2012年から団塊世代の大量退職が始まっており、これから本格的な貯蓄の取り崩しが始まる。ここで財政赤字のファイナンス問題が顕在化する。ずっと経常黒字が続くという前提なら、自民党の国土強靭化計画も成り立つが、ここでさらに財政支出を増やすのはかなり危うい。日本を財政危機におとしいれる可能性がある。財政破綻は今や夢物語ではなく、徐々に現実化しつつある。

建設業の過剰な雇用を生み出すことによって、また労働市場がいびつになってしまうという問題もある。本来、次の政権がすべきは、成長産業を生み出すこと。高付加価値な農業、観光、医療などの成長産業に雇用を移すことをせず、あいかわらず汎用製品の製造で競争を続けていけば、日本はコスト面でアジアとの価格競争に敗れ続けるだろう。

自民党中心の政権で強まる緩和圧力

さらに、自民党中心の政権になれば、日銀への金融緩和圧力が高まる。来年4月の白川日銀総裁の任期切れ後、より緩和を促進する総裁が就任する可能性が高い。日銀は世界的な緩和競争に巻き込まれていくことになる。仮に日銀の信頼が問われるような政策がとられれば国債価格は急落し、同時に円が急落する可能性がある。本来は物価高だけを求めるべきではない。国民の所得が上がり、消費が拡大した結果の物価上昇なら健全だが、先に物価が上がるのは本末転倒。物価が先に上がれば消費は減退し、国民所得が減るので本来とられるべき政策ではない。

金融緩和によって溢れたマネーが、利益を求めるために世界経済の矛盾点を見つけ出して、攻撃を仕掛けるだろう。それがまさに欧州債務危機だった。今は消極的選択で円が買われているが、ユーロ圏の財政再建が進めば、次に攻撃されるのは日本だ。振り子が振れて今度は日本が弱者になる可能性がある。

経済と安全保障は一体だが、安倍総裁になると日本と中国の関係改善が進まない可能性が高い。日本が戦後ここまで成長したのは、戦争や紛争とまったく無縁だったからだ。米国の傘の下にいたから安全だったので、経済成長にまい進できた。安倍政権で日米安保は強まるだろうが、あまり中国に対して強硬的な態度をとると、対中貿易や日本企業の中国国内でのビジネスへの影響が長引くことが懸念される。経済と安全保障のバランスに十分な注意が必要だ。

米国は超低金利政策を解除へ

また今後、米国の雇用問題が峠を越え、米国経済の回復傾向が明確になれば、さらに円安傾向がはっきりとしてくるだろう。米国ではシェールガス革命が起きており、米国はこれによって世界のガス価格の決定権を握るようになる。これが米国経済復活のきっかけとなり、ドル高要因となる可能性が高い。

米国のQE2はドル安、株高、低金利、物価高を生み出し、結果的に格差の拡大につながった。ドル安は大企業の収益を改善し、株高は富裕層に利益をもたらし、なおかつ企業は潤ったので配当を増やした。富裕層だけがドル安と株高の恩恵を受けてきたのだ。

商業不動産融資で財務が痛んだ中小金融機関は、低金利になっても中小企業に対する貸し渋りを続けた。米国の預金保険機構が四半期ごとに健全な金融機関を発表しているが、中小を中心にいまだに700以上の金融機関に問題があるとしている。低金利は貸し出しの利幅の縮小をもたらし、中小企業は金利低下の恩恵を受けられなかった。

かつ、ガソリンを中心とする物価高は、国民生活を圧迫した。米国の雇用者の報酬は過去2年ほとんど増えていない。むしろ物価高で、実質的な報酬は減っている。これが格差の拡大を大きくしている。

QE3はさらにその格差を大きくしている。これは最初からわかりきっていたことだが、FRBは早晩、超金融緩和政策を打ち止めざるを得なくなる。米国はドル安に頼る輸出倍増計画を打ち止めし、正しい成長戦略に舵を切らざるを得ないだろう。これは中期的なドル高要因となる。投資家は中長期的な円安に備えるべきだ。

中原圭介(なかはら・けいすけ) 金融・経営のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」のエコノミスト兼アドバイザーとして活躍。金融機関や企業への助言・提案や富裕層の資産運用コンサルティングを行う傍ら、執筆・セミナーなどで金融教育・投資家教育の普及に努めている。経済だけでなく、歴史や心理学など、幅広い視点から世界経済の動向を分析し、その予測の正確さには定評がある。著書多数。近著『日本経済大消失』(幻冬舎刊)

 

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