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ドル円は150円へ―40年間の円高相場の巻き戻し

2013.05.13
ネクスト経済研究所 斉藤洋二代表

――シェール革命がドルをサポート、円は「いい円安」から「悪い円安」へ――

劇的なシェール革命が支えるドル相場

日本はエネルギーを完全に輸入に頼っている。天然ガスは100%輸入であり、現在はカタール、オーストラリア、マレーシアなどが主な輸入先だ。これらの国とは安定調達のために長期契約を結んでおり、天然ガスは液化する必要があるため、直ちに米国のシェールガスがすべてを代替することはできない。

 

日本の天然ガスの輸入価格は約17ドル(100万BTU換算)の一方で、米国産のシェールガスは3~5ドル(同)で取引されている。従って米国のシェールガスに代替できれば、日本の現在の天然ガス輸入金額である年間約7兆円が、輸送コストを含めてもこの6割の約4兆円に減るとの試算が可能だ。ただし、安定供給、液化・港湾設備などの観点から代替が容易に進まない点で現実的ではなく、いずれにしろ日本がエネルギーを完全に海外に依存する体質は変わらないだろう。

一方、米国ではテキサス州やサウスダコタ州で大量のシェールガスが産出されており、米国経済の復権に貢献している。埋蔵量は石油が200年、ガスが100年程度あると言われており、今後は米東部でも採掘が進む予定だ。関連産業で約170万人の雇用を生み出しており、将来的には400万人の雇用増につながると予想されている。シェールガスを運ぶパイプラインの敷設、鉄道輸送の活性化も景気押し上げに貢献し、関連株は活況を呈している。

米国の貿易赤字は5580億ドル(約55兆円、2011年)だが、そのうちエネルギー関連は4623億ドル(約46兆円)。しかし、現在はエネルギー輸入国である米国は、将来自給国になり、さらに輸出国になるので、米国の貿易赤字は劇的に改善すると予想される。実際、遠からず米国は世界最大の天然ガス産出国になるとみられ、原油でも2017年にはサウジアラビアを抜く見込みで、「サウジアメリカ」との新語も出来た。米国は2020年までにガスの純輸出国となり、35年に全エネルギーを自給できる。

米国は財政改善も期待できる。これまではエネルギー安全保障のために中東に関与せざるを得なかったが、今後はこのくびきから解放される。2014年会計年度で5260億ドル(約52兆円)だった国防予算は、軽減されてゆくだろう。

さらに、米国の製造業の復活が期待される。かつて米国では製造業がGDPの40%を占めていたが、今は12%まで低下している。中国、アセアンに進出する製造業が多かったが(オフショアリング)、中国の賃金上昇や輸送コストなどによりメリットが減少し、最近では本国回帰の兆候がみられる(リショアリング)。この動きを加速するのがシェール革命だ。すでにGEやフォード、キャタピラーなどがそうした動きを見せている。シェール革命は総じてドルをサポートする要因となるだろう。

「いい円安」から「悪い円安」へ

現在は黒田東彦日銀総裁の「異次元緩和」により、政策的な円安誘導が行われ、これが功を奏している。この円安の動きは、この緩和政策が続く2年程度は持続すると予想される。円の貨幣供給量は爆発的に増え、一方で、米国で金融緩和の出口戦略が語られるようになれば、この円安の動きはさらに加速するだろう。政策的に誘導されたインフレと円安が進行する可能性が高い。

ここまでは「いい円安」であり、この局面でのターゲットは2007年6月に円キャリートレードの活発化でつけた1ドル=124円だ。

円相場は現在、歴史的な大転換期に直面している。1973年に変動相場制に移行してから今年はちょうど40年目。1ドル=308円から円の価値は4倍に高まり1995年に1ドル=80円を割り込み、さらに2011年には75円台をつけた。今はそのダブルボトムの戻り相場にある。

政策効果による「いい円安」は、次第に日本のファンダメンタルズ悪化を反映した「悪い円安」に変化していく可能性がある。この時点から、市場は「日本売り」の様相を呈するだろう。これ以降の円安やインフレは経済活動を活性化させる性質のものではなく、悪い経済活動の結果として生じるものだ。

エネルギー問題の脆弱性は引き続き日本経済のウィークポイントであり続ける。また、今後も人口減少は止まらず、2048年には総人口が1億人を割り込み、国内市場は縮小し続ける。日本の輸出額の対GDP比率が11%程度であるように、輸出立国として生き残るには心もとない数字だ。現在の円安も価格効果は出ているが、数量ベースで輸出が増えているわけではない。国内の空洞化は止まらず、製造業が円安のメリットを生かして以前のように復活するかどうかは非常に疑問だ。

さらに、日本の財政問題はより深刻化する。単年度の税収約40兆円に対して、歳出は約90兆円だが、これは表向きのこと。ここ数年、内閣が決めた中期財政フレームが事実上守られておらず、補正予算によって実質の財政赤字はさらに膨らんでいる。毎年このような形で政府債務残高は増えている。長期国債のリスクプレミアムは高まり、資産フライトが現実化する可能性がある。長期金利の上昇は金融機関の経営を不安定化させるだろう。

日本経済は曲がり角にあり、衰退の局面に入った。円相場も長期的に円安トレンドに入ったと言わざるを得ない。プラザ合意後の1ドル=240円からルーブル合意の1ドル=152円までの円高局面は、1年半という短い間での出来事だった。この間の相場はあまり〝こなれて〟いないので、ドル円レートはここに吸い寄せられやすい。今後はこれまでの40年に及ぶ円高相場の巻き戻しで、ドル/円は150円を視野に入れた円安の展開になるだろう。

斉藤洋二(さいとう・ようじ)
1950年大阪市生まれ、74年一橋大学経済学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し為替ディ―ラ―に。88年、日本生命保険に入社し、為替、債券、株式など資産運用を担当し フランス現地法人社長に。また(財)国際金融情報センターに在籍し、さらに、関税外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。

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