「日経平均4万円夢ではない」の一方で増加中の海外投資
そもそもアベノミクスとは、物価上昇目標2%を達成し、長年日本を覆ってきた深刻なデフレ経済を克服しようという政策だ。大胆な金融緩和が行われ、その金が株式市場などに流れ込み、今後はうまくいけば企業の売り上げ増、従業員の給与増などが起きて、税収増というバラ色のサイクルが始まる。それが、ベストのシナリオだが、そう事は簡単に運びそうにない。
それは、財務省が今年発表した「平成24年度予算の後年度歳出・歳入の影響試算」に現れている。この試算は、平成27年度までの歳出と歳入を試算したもので、名目経済成長率1%台半ばで推移した場合の国の財政収支はどのようになるか、ということを示したものだ。
日銀は2年間で2%の物価上昇を目指して、さらなる質的・量的金融緩和政策を実施している。その目標を少し下回るレベルで推移した場合の財政収支だが、平成25~27年度まで赤字となる。
25年度 26年度 27年度
歳出 91.9兆円 98.2兆円 101.4兆円
歳入 46.1兆円 52.9兆円 56.0兆円
もちろん、歳入額が2年で約10兆円増加するものの、歳出額も同じく2年で約10兆円増加する。実はこれ、成長率を3%に設定したところで財政収支が赤字になることは変わらない。しかも、消費税率を現在の5%から8%へ、さらに10%へと段階的アップを行った上での結果だ。
投資助言会社アブラハム・プライベートバンクによると、毎月5万円を海外ヘッジファンドに積み立てて1億円を目指す「いつかはゆかし」への入会者が増えており、昨年11月のアベノミクス相場の前と比べ、投資助言残高は60%増の約745億円に、会員数も50%増になったという。
もちろん、円安進行による要素もあるが、こうした財務面の問題や、インフレ懸念、さらには、アベノミクスによるバブル崩壊の後のことを考えているようだ。
日経平均4万円という話が出てくる一方で、日本国内の足もとの財政を見ると、喜んでばかりはいられないようだ。
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