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「金持ちは税率70%でもいい VS みんな10%課税がいい」(富裕層本書評4)

 富裕層にはもっと課税を! 富裕層だけでなく広く平等に課税を! この議論は時代が変わっても、なくならない。というよりも決着はついていない。「ゆかしメディア」がその富裕層関連書籍の書評を行う第4弾は、「金持ちは税率70%でもいい VS みんな10%課税がいい」(東洋経済新報社)。富裕層への課税容認派と反対派に分かれて、それぞれ2人の論客が行った討論の模様を収録している。内容的に白黒はついていないが、イベントの演出上というか、最後に会場の聴衆の投票により一応の勝敗を決めている。果たして勝者は。

 永遠の議論は、カナダの公共政策ディベートである「ムンク・ディベート」によって、昨年5月にトロントで行われた。

○金持ち増税賛成チーム ポール・クルーグマン(プリンストン大教授、ノーベル経済学賞受賞)、ジョージ・パパンドレウ(元ギリシャ首相)

○金持ち増税反対チーム ニュート・ギングリッチ(元米下院議長)、アーサー・ラッファー(レーガン元大統領の経済顧問)

 詳しい経歴は説明する必要がない論客4人がそろい、この問題に関しても深い見識を持つベストな顔ぶれと言ってもいい。

 まず、ご存じの方も多いと思うが、米国には最高税率91%という時代があった。一方で日本にも、所得税+住民税で88%という時代もあったように、税率や税制は時代によって大きく変わっていく。それぞれの立場から主張を展開こそしているものの、結局は、税金の捕捉をきっちりとしなければならない、という点で実は意見は一致している点で興味深い。
財務省
出典:財務省、日本の所得税率の推移

 増税反対のラッファー氏も「誰だって国民に奉仕する政府を望んでいます。問題は政府に増税してほしいか、です。あらゆる抜け穴や控除、免税措置や例外をなくして、低率の税をかけるんです」などと述べているのだ。

 ちなみに富裕層増税を自ら提唱した世界有数の大富豪であるウォーレン・バフェット氏。NYタイムズ紙のコラムで、2010年は約700万ドルの税金を支払ったことを告白しており、これは所得の17.4%にあたるという。逆算すれば、所得は約4000万ドルということになる。

 しかし、当然ながらキャピタルゲインの含み益は課税されておらず、これが100億ドル増えて、ビル&メリンダ財団に16億ドルを寄付した分も合わせて、ラッファー氏の計算では、所得は実質的には120億ドルだったとしている。大富豪や超富裕層のレベルになると、税金の掛らない方法を実践しているのだ。

 したがって700万ドルの税金は、所得に対して実質的にわずか0.06%に過ぎないというわけだ。税率が低くても良いから、税制をしっかりとして抜け道をなくそうというのが増税反対派の言い分でもある。

 そもそも答えはないために、堂々巡りの議論となっている感も否めない。税率ではなく、いかに取るかが重要ではないだろうか。もうひとつ、面白いエピソードを紹介しておく。クルーグマン氏のインタビューで、司会者に秀逸な突っ込みがあった。


ポール・クルーグマン
ポール・クルーグマン氏
 クルーグマン氏はノーベル経済学賞を受賞し、副賞として800万スウェーデンクローナを受け取っている。また、コロンビア大教授の年間報酬は、19万8700ドル(THE CHRONICLE of Higher Educationより)ということから、資産的には富裕層であることは推測できる。

 「基本的な行政サービスが維持できるかどうかが不安視されているこの時代に、富裕層への税率がかつてよりもずっと低く抑えられています。政府は様々な方法で歳入を増やさなければなりません」と発言している。

 そこで司会者が次のようにたずねている。

 「あなたも間違いなく高額所得者の1人ですよね。もっと税金を払いたいんですか」

 クルーグマン氏は「払いたいわけではありませんよ。基本的に私が主張しているのは私個人の財政状況には不利になることばかりです。ここで話したようなことを推し進めれば、私は懐を痛め、実入りを減らすでしょう。でも私は好ましいト思える社会で暮らしたい。その対価としてなら、進んでもっと高い税金を払います」と返している。

 ちなみに、クルーグマン氏が最高税率を適用すべきだとする年収は100万ドル以上で、70%など厳しい税率が望ましいとしている。富裕層も財源が必要だという認識があり、増税もやむを得ないと考えているようだ。

 永遠の議論は答えが出ないままで、先進諸国の債務はどんどん膨らんでいくばかりだ。
評価(5点満点):4.0

著書:ポール・クルーグマン
エール大卒、プリンストン大、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授を兼任。2008年にノーベル経済学賞を受賞した。

ジョージ・パパンドレウ
アムハースト大卒、祖父、父と3代続けてギリシャ首相の座についた。2009~11年まで在任し、その間にギリシャ経済破綻を経験。適切な対策を取ったとして、フォーリンポリシー誌の「世界の頭脳トップ100」に選ばれた。

ニュート・ギングリッチ
エモリー大卒、35歳で下院議員に初当選。下院議長も歴任し、12年には共和党の大統領候補予備選にも候補者となり次点に。

アーサー・ラッファー
エール大卒、ロナルド・レーガン大統領の政権下で2期にわたり経済顧問。ラッファー曲線で知られ、シカゴ大学教授などを歴任。

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富裕層の増加は2割どころではなかった「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか?」(高岡壮一郎著)(富裕層本書評3)
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