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開業医の医療法人化で節税 4つのポイント

 医療法人化している開業医には、税制上の様々なメリットがある。他の法人では受けられないそれらはどのようなもので、どうすることで受けられるのか、開業医の顧客を多く抱え、医療関係者向けの経営や税制に関する著書もある税理士の中島由雅氏に伺った。

「医療法人も通常の法人と同じ扱いですが、医療法人だからこそのメリットはいろいろあり、開業医であれば、是非そのメリットを最大限享受していただきたいと思っています」

ポイント①医療法改正、国の意図を理解しよう


「第五次医療法人法改正で大きく変わったのは、『新たな医療法人法では、医療法人の財産は国庫に帰属する』とされたことです。
 こう言うと『医者は財産を没収されるのか!』という印象を与えるかもしれませんが、そうではありません。


中島由雅氏
 私がこれまで今までお話ししてきたことと共通して、大切なのは『国の意図を理解する』ことです。

 この文面に関する国の意図は『高齢化も進み、役に立つのは遠くの大病院よりも近くの町医者。その地域の医療はもっと活性化してもらいたい。なので街のお医者さんは、そんな簡単に廃業しないでいただきたい。廃業されたら、診療圏を失います』ということです。

 こう言うと脅しのような印象ですが、要は医療法人として診療を続けていれば、財産は守られますし、何も問題はありません。

 医療法人には、会社などの法人よりも多くのメリットがあります。たとえば医療法人に1000万円を出資して診療など医療活動を行った結果、クリニックの価値が10倍、1億円になったとします。

 出資金の相続評価は旧医療法人では1億円が課税の対象となる金額です。ところが新たに作られた医療法人では、払い込んだ1000万円が評価金額となります。つまり評価は10分の1の差があります」

ポイント②不動産は医療法人に集約して、事業の規模をうまくコントロール!


「ほかにも、医療法人に不動産などを集めておくのはメリットがあります。
 自宅とクリニックがつながっている、もしくは所有している土地にクリニックがあるという場合は、クリニックを医療法人で建てる、もしくは建て直しをすると、その土地は事業用ということになり、相続対策で非常に有利になります。  
 医療法人自体には、相続がないからです。個人であれば相続のつど課税対象として少なからず負担を強いるおそれがありますが、医療法人に入れておけばその負担が軽減できます。

 開業医の税制上のメリットはほかにもあります。租税特別措置法第26条には、社会保険診療報酬の金額が5000万円以下で、かつ医業・歯科医業の総収入金額の合計額が7000万円以下である場合には実際の経費金額によらず、一定の計算式によって経費の金額を計算する方法を選択することが認められています。

 これはつまり、診療報酬収入が5000万円、自由診療を足しても7000万円に収まっていれば、みなし経費のようにすることができる、ということです。これは大変メリットのある制度です。
 報酬の額がこの範囲に収まる規模を考えると、適用されるのはほとんどが開業医、なかでも歯科医がもっとも適用されやすいでしょう。
 やたら売り上げを伸ばすよりも、事業の規模をコントロールし、この範囲に収めたほうがメリットが大きくなることもあります。

 ほかにも、これは開業医に限ったことではありませんが、個人型確定拠出年金の掛け金は全額所得控除の対象となります。
小規模企業共済の掛け金(月7万円が上限)も、全額所得控除になります」

ポイント③医療法人だからこその注意点


「医療法人が特殊だからこそ受けられるメリットはたくさんあり、うまく活用したいところですが、特殊だからこそ、専門家によっても意見が異なる部分もあるので、そこは注意が必要です。

中島氏の著書
 具体的には、医療法人の理事長が、自宅を社宅として医療法人で設置していたら、行政から認められないと言われたというのです。

 医療法人は、特別の利益の供与は禁じられています。配当も禁止とされ、このケースでも自宅が特別の利益の供与に当たると判断されました。

 これは、税法であれば規約があって実体が伴っていれば問題のないケースです。税法上はOKだが医療法上は微妙なライン、というものが存在します。

 ただし、これも専門家によっても考えが異なる部分であり、また判断する行政によっても見解が異なる可能性はあるので、注意が必要です」

ポイント④細かいことよりも大切なのは


「医療法や税制の改正に関して、ほかにも気をつけるべきことは、医療薬が市販薬にシフトしてきたことです。
 来年より医療費控除が改正になり、従来の医療費控除と選択適用ではありますが、ガスター10、ロキソニンなどスイッチOTCと呼ばれる市販薬も対象になります。

 ここ最近、薬の価格が上がっているので、薬の価格を下げたい、できるだけ医療費を使わず、民間の薬で治してくれという国の方針ですね。
 そのことを踏まえると、医療機関はジェネリック医薬品の代用など、処方する薬にも意識を向ける必要が出てきます」

 最後に、『先生は治療だけやっていれば病院は何も問題ない』という時代は終わったと認識することが大事です。
 歯科医院の数はコンビニより多く、その競争は激しくなっています。工夫のない、差別化ができない医院はこの先苦しいでしょう。

 大切なのは『診療理念をしっかり持つ』ことです。『この医院は何を大切にし、どのような患者さんにどんな治療を施す』かを、明確に打ち出す必要があります。それが差別化であり、選ばれる医院の条件です。
 たとえば歯科医ならば、住宅街で子供から年配の方まで幅広く治療を行うのか、オフィス街でとにかく早い治療をするか、矯正歯科、審美歯科など打ち出し方は様々です。

 理念をしっかり持ち、それに沿った行動をする、理念に合わないことはしない。たとえば『じっくり治療を行う』方針なのに混んできたからととにかく早い治療をしていたら、患者さんは『この歯医者さんは言っていることとやっていることが違う。全然丁寧に診てくれない』と離れていってしまうでしょう。

 競争は激しくなっていますが、工夫し、理念と行動にブレのない医院は患者の支持を得て、伸びています。そこに医療法人だからこそのメリットをうまく受けられるようにすれば、医院の経営は安泰です。ぜひそこを目指していただきたいと思います。

 私たち税理士も、そのような医院の経営をサポートさせていただいています」

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 中島由雅(なかじま・よしまさ)

 中央税務会計事務所 所長補佐
 税理士・CFP®。1974年埼玉県生まれ。埼玉県さいたま市の税理士事務所「中央税務会計事務所」2代目、職員数85名クライアント数600件超、税務署出身(法人・資産税)や金融機関出身等専門スタッフも多数在籍のもと、個人事業から大法人まで様々な業種を関与。併せて中小企業庁の認定支援機関の事務所として相続・事業承継を始めとした経営相談にも親身な対応をしている。

 また、セミナー講師として商工会議所を中心に全国各地で積極的に行っている。親身な姿勢と専門用語を一切使わない手法がわかりやすいと好評を得ている。

 著書に『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版、共著)、『税理士のための医業顧客獲得法』(中央経済社、共著)がある。
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