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世界のエグゼクティブがワインを学ぶ3つの理由

「海外の人とビジネスに関係する社交の場でどんな話をするか」
 これは非常に重要だ。


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 その場にいる多くの、いろいろな国の人が関心のある話題で、話す人が一目置かれ、場を和ませる笑いも起こるようなものを求められる。そのような話題は意外にない。

 そのような場で話題になり得るのがワインだ。
 ワインは今や、エグゼクティブな人たちの社交の場での教養として、海外では社内で研修が行われるほどに重要な地位を占めるようになっている。

 なぜそこまでワインが重宝されるのか、理由は大きく分けて3つある。

 理由1:タブーのない共通の話題になる
 ビジネスに関係する社交の場なので、当然仕事の話はすることになるが、仕事の話しかしないのも、好印象を与えない。
 日本人同士ならば「仕事熱心な人」とよく捉えてもらえるかもしれないが、海外では「仕事しかしない人=面白くない人」という評価だ。

 また、社交の場であまりビジネスに深入りして話すのはマナーとしてNGなうえ、インサイダー取引等に関する規定の厳しいアメリカでは、立ち話でもそれらの行為と疑われる可能性もあり、なおのこと社交の場ではNGだ。

 では何の話をするか、「共通の話題を見つける」は続く会話の常套手段だが、ビジネスの社交の場で出会う人たちは、ほぼ初対面に近い、国籍も人種もまったく異なる人たちである。
 日本人同士であれば共通の話題はいくらでもつくれるだろうが、国際的な場では「政治と宗教の話はタブー」と言われるように、触れてはいけない話題も多い。

 そのようなとき、共通の話題になるのがワインだ。
 水よりも安いワインもたくさんあるヨーロッパは地理的、歴史的にワインになじみが深い。アメリカは今や世界一のワイン消費国であり、多くの人が日常的にワインをたしなむ。

「どんなワインが好きか」「自分の国ではどんなワインがつくられている」「こんなワインがおいしい」といった話は、多くの人が関心があることなのでテーマとして盛り上がりやすい。

理由2:ハイクラスな人たちの好む会話になる
 また、あるエグゼクティブによると、ワインを介しての会話は前向きなものになるという。愚痴や悪口を言い合う酒の場もよくあるが、不思議とワインのある場ではそうなりにくい。「何が悪いか」ではなく「ここがよい」といった話になる。

 これはハイクラスな人たちの会話と非常に相性がよい。彼ら彼女らの話は常に前向きで、話題は「どうすればうまくいくか」「もっと成功するためには」といったものがほとんどだ。

 ワインの質が全体的にレベルアップしていることも、この傾向に拍車をかける。フランスなどの歴史ある国に比べ「ワイン後進国、発展途上国」とされた国々のワインは「安かろう・悪かろう」の代表のように考えられていたが、今ではそれらの国で生産されるワインのクオリティはだいぶ上がった。むしろ「安くておいしい」ものが増えている。

 人はおいしいものを口にしながら後ろ向き、ネガティブなことを考えたり、発したりしないものだ。富裕層を始めハイクラスな人たちなおいしいものに対して貪欲な人が多いことからも、彼ら彼女らとワインは相性がよい。

理由3:エリートな人たちの「教養」として今やワインは不可欠
 ワインが重要な地位を占めるようになった大きな理由はこれだ。ワインは今や、間接的だけでなく直接的とも言えるほどに、ビジネスにおいて重要な役割を果たすようになっている。
 ワインの知識を持ち合わせていないだけで、いつの間にかライバルに後れをとったり、敗北を喫していることもあるという。

 かつて世界的なワインのオークションハウス「クリスティーズ」にアジア人初のワインスペシャリストとして勤務し、現在はエグゼクティブな人たちにワインに関するアドバイスを行っている渡辺順子氏は語る。
「アメリカのホワイトハウスやイギリスのバッキンガム宮殿、フランスのエリゼ宮などでは、ワインが外交時のメッセージとして使われています。

 中国の習近平国家主席がイギリスを訪れたときのことです。バッキンガム宮殿で宴席が設けられました。そのときに出されたワインが、イギリス人にとって最高級とされるワインでした。
『イギリスは中国と友好な関係を結びたい』というメッセージだったのだと思います。

 一方、習主席がアメリカを訪れた時、そのときに出されたワインは、1本たったの15ドル。ホワイトハウスでの公式晩餐会ではありませんでしたが、中国はあまり歓迎されない何か理由があったのではないでしょうか。

 外交の場では、出されるワインで、いろいろなことを察しなければならないのです。
 そのためにはワインに関する知識が不可欠です。

 これはビジネスでも同様です。エグゼクティブな人たちの会食の場で、どんなワインを頼むかは見られています。お店ですからソムリエに任せればいい、という考えも間違いではありませんが、その際もソムリエとやりとりをしたり、好みを伝えて料理に合いかつ飲みたいワインを頼むといった所作から、その人が判断されるケースはよくあります。


 海外の方が出張で日本に来られた際も、会食ではどのようなワインをサーブするかで、商談にプラスにもマイナスにも働きます。

『日本に来ているのだから和食が一番』とは限りません。そのようなことはほかの人も考えるのでかぶる可能性がありますし、旅行で来ているわけではないのですから、食べ慣れたものを提供する場のほうが、相手の方もリラックスできて商談が弾む可能性も高いのです。

 西洋人の口に合う料理に必須なのがワインです。相手のことを考え、手を尽くして入手したワインをお出しできれば、会食の場もよい雰囲気になります。

 ワインはビジネスの成否に大きく関わってくるのです。

海外では、参加者がそれぞれワインを持ち寄ってのパーティーがよく行われます。日本でも、参加者が1品持ち寄ってのホームパーティーなどがあると思います。
 そこでセンスのいいものを持ってくる人は一目置かれますし、主催者が用意しているものとかぶるようなもの、微妙なセンスのものを持参する人はあまり良い評価は得られません。

 海外のパーティーは、ワインを通じたやりとりが、ホームパーティーよりももっと高い、先ほどお話した国家間の外交に近いレベルで行われているということです。
 海外のエグゼクティブは、みなさんいいワインを持って参加されます。ワインのプロである私も唸るようなものばかりです。

 残念ながら日本人の方でため息が出るような見事な品々を持参される方はまだ少数ではないでしょうか。一流のワインを持参される他国のゲストには、持参したワインによって『センスがない』と伝わってしまうこともあります。

『日本人はもともとワインを飲む習慣がなかったのだから仕方ない』といったことは言い訳に過ぎません。アジアでも、韓国や香港など政府でも民間でも外交力のある国には、ワインに精通している人がたくさんいます。
 それらの国では、国家レベルで教養としてワインに関する知識を身につけようという活動が行われています。

 そもそも、エリートと言われる人たちは、仕事力のほかにも、歴史、文化、芸術など様々な教養を身につけていて、交渉事や仕事以外の人脈においても、非常にスマートにやりとりをし、総合的に見て仕事ができると見なされます。

 ワインについて知ることは、歴史や政治など様々なことを理解するということです。『この品種はこの土地で作られて〜』と丸暗記するのではなく、どのような歴史的、政治的背景があって銘醸シャトーが作られたのかなど、高級ワインについての知識が必要になります。

 海外のエグゼクティブにワインに詳しいと思われるとは、高級ワインに精通していワインの裏にある背景や歴史などに対する知識を、教養として身につけている、この人は『一流を知っている』と判断される、ということです」

 私たち日本人が思っている以上に深く、かつ重要なワインの世界。教養として身につけたいが、何から手をつければよいか、見当もつかないという人も多いのではないか。

 渡辺氏に「まずはこれを押さえる!」という銘柄やその背景などを聞いた。
後半記事「エグゼクティブな場で恥をかかないために 知っておきたいワインリスト」

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 渡辺 順子(わたなべ・じゅんこ)

 ニューヨーク移住、フランスへのワイン留学後、2000年より世界最大オークションハウス、ニューヨーク・クリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとして活躍。

 2009年に退社し、ワイン・コンサルタントとして独立。ワイン投資のアドバイザー及びセラーを管理するセラーマネジメントを行う。ワインオークションハウス「ザッキーズ」の日本代表として日本にワインオークションを展開。
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