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リターン57%、報酬5億ドル、新進気鋭のヘッジファンド、ツーシグマ【ヘッジファンドマネジャー列伝③】

ノーベル財団も投資を増額

 現在、急速に存在感を大きくしているヘッジファンドが、ツーシグマ・インベストメントだ。

 ノーベル賞を制定しているノーベル財団は、財団基金の運用にヘッジファンドの割合を増やしており、ツーシグマの運用成績が良かったことから2014年にツーシグマへ追加投資を行ったことも明らかにしている。

 ツーシグマの2人の経営者ジョン・オーバーデックとデビッド・シーゲルは、2015年のヘッジファンドマネジャー報酬ランキングで7位に入った。報酬額はそれぞれ5億ドルだ。
 2014年のヘッジファンドマネジャー資産額ランキングでも、両者はそれぞれ28億ドルで17位に入っている。

 ツーシグマは2001年に設立。オーバーデックとシーゲルの2人はともに大手運用会社のDEショー出身で、数学の研究、さらにはクオンツ運用で実績を持ち、キャリアは長い。

 同ファンドが注目されたのは14年の末のこと。同社のエンハンスド・コンパスファンドの同年の年率リターンが57.55%となってからだ。
 ツーシグマコンパスケイマンファンドの運用成績は14年が25.56%、15年が15.02%と2年連続2ケタを記録。
 ツーシグマアブソリュートリターンケイマンファンドの運用成績は、14年が10.09%、15年が14.99%だ(HSBCオルタナティブインベストメントグループの運用成績レビューより)。

 15年夏には多くの大手ファンドが損失を出したが、そのなかでもツー・シグマは高率かつ、着実にリターンを挙げている。
 そのような堅実なスタイルが評価され、投資家からの信頼度合いを表すランキング「ヘッジファンドレポートカード」でも、ツーシグマは5位に入っている。

 これだけのリターンを挙げていれば、自然に金も流れ込んでくる。運用資産額も2011年の50億ドルから2014年7月には200億ドルを突破、同年10月には230億ドルとなり、現在の運用資産総額は280億ドルだ。
 今では公的年金やSWFなどの大型資金も入るようになったという。
 14年に立ち上げた33億ドルのマクロファンドは、近年では最大級の募集規模だった。

“人の心がわかるコンピューター”の開発

 ツーシグマはデータセンターで独自の投資環境や技術開発の研究を行っており、企業の発表、幹部の売買や機関投資家の売買、天候、それらに加えてツイッターなどSNSも合わせてデータと相場の動きを分析し、運用モデルの開発を行っている。

 ツーシグマは2人の創業者が役割を分担して運営している。オーバーデックがモデルの構築を主導し、シーゲルがそのエンジニアリングとインフラの担当だ。

 オーバーデックは1986年、第7回国際数学オリンピックで16歳にして銀メダルを獲得。そのときからすでに「論文を書いても満足できそうにない。それよりも数学を何かに生かしたい」と語っていた。
オーバーデックが数学的なアプローチを担当するのに対し、シーゲルが物理的、科学的なアプローチを行うと言える。シーゲルは、自分のバックグラウンドは人工知能(AI)技術であるとし、学生時代はロボットのプログラミングなどを学んでいたという。

「ロボットにはセンサーがあってデータを収集できるし、感じ取った事柄に対応して世界と交わっていく必要がある。
投資も実は同じようなものだ。市場やその他の情報供給源はデータを提供するセンサーであり、コンピューターはそのデータに基づいて考え、市場と交わるために命令を実行し、投資する。
 この2つにはたくさんの類似点があることが、私に投資マネジメントへの興味を抱かせた」
 シーゲルはインタビューで語っている。

 コンピュータープログラムの活用はヘッジファンドの運用でメジャーになりつつあるが、コンピューターで割り切れない人間の意思決定による部分を、いかにコンピューターが把握できるかが大切だとシーゲルは考える。
「昔から、人間の意思決定が投資の世界で良いものとは限らなかった。むしろ悪影響を及ぼしてきたが、実はその意味はさらに強くなってきている。
 例えば設定年来18%以上の新興国市場投資で著名なネフスキー・キャピタルがファンドの閉鎖を発表したが、マーティン・ タイラー氏は自身のマクロ戦略がアルゴリズム主体の時代に合わなくなってきたことを理由に挙げている。

 つまり、コンピューターでは人の割り切れない意思決定プロセスを把握しきれないところがある、ということだ」

 ツーシグマの約900人の従業員のうち、3分の2は研究開発部門に所属し、従業員の6割は非金融業の出身者だ。数学オリンピックの金銀メダリスト8人を擁している。

 マサチューセッツ工科大学やカーネギーメロン大学、カリフォルニア工科大学などでコンピューター科学や数学、工学を修めた者たちが集まっている。
 ツーシグマが人材獲得のうえでのライバルと考えているのは、ゴールドマン・サックスやジョージ・ソロスなどの金融関係ではなく、グーグルやフェイスブックといったシリコンバレーの企業だ。

 ニューヨークのオフィスもウォール街ではなく、ダウンタウンのSOHOに構えている。社内の様子は金融の会社というよりもITのベンチャー企業のようだ。
 彼らが単に金融的に考えるのではなく、人間の意思決定を考慮できる人工知能のアプローチを可能にできる開発に日々勤しんでいるのだ。

「すべてはつながっている」

 シーゲルはインタビューで、こう話している。
「今やコンピューターがすべての思考活動を行っている、と言う人もいるが、今でも解決すべき問題自体を設定しているのは人間だ。

『問題を設定する』とは何か。コンピューターのアルゴリズムは、これまで人が考えもつかなかったリスクを発見できるかもしれない。私は、ある一定のレベルまでは、徐々にはこうしたことも起こっていくと思うし、現に起き始めている。

 しかし人間の知性に匹敵するレベルの総合的な考える力を持つには、まだどう実現するか誰もわからない。それが5年先なのか10年先なのか、はたまた100年先なのか予測が難しい。問題そのものがまだよく理解されていないからだ。

 人間の脳はすごい。AIで作ってきたものは非常に面白いしパワフルでもあるけれど、人のように『考える』ことはまだできない。

 ただし、これも変わるかもしれない。将来的には、技術が発展した結果、コンピューターが問題自体を設定でき、そして解決できるようになる可能性がある」

 ツーシグマは、人間の意思決定とコンピューターの両方を尊重して考えていく。仮に人間の意思決定方法を割り切ったものにできたとしても、コンピューターの活用なしに運用はできないと考えているからだ。どういうことだろうか。シーゲルの答えはこうだ。
「産業界では、50~70年前はサプライチェーン(供給網)に頼る企業などなかった。
GMのような会社は自社工場内ですべてを組み立てる、完全な垂直統合オペレーションだった。今日では状況がまったく変わっている。複雑に組み合ったサプライチェーンに頼り、世界の経済はグローバリゼーションでつながっている。

 昔は、アメリカ企業を研究するときはその会社だけ研究していればよかった。しかし現在アップルは中国に非常に依存している。サプライチェーンとしてだけでなく、そこから多くの売り上げも得ている。だから中国経済が弱まるとアップルの勢いも弱まる。つまり中国経済を考えることなくして、アップルへの投資すら決断することはできない。

 アップルに限らず、いろいろな会社が中国だけでなく日本、欧州などとも関係しているだろう。投資の問題はあまりに複雑になりすぎて、伝統的な人間主体のメソッドは過去ほど有効でなくなってきていると思う」


ツーシグマのホームページより
「すべてはつながっている」
 ツーシグマは、会社のホームページ上でそう語っている。変動する価格も、天候の変化も、進む国際化も、すべてつながっているという。
 ツーシグマは、人工知能と発展させてきたテクノロジーで、データに法則性を見出し、投資、投資の戦略を構築していく。

 インタビューで、シーゲルはこうも話した。
「実は人間はかなり矛盾がなく、予測しやすい。1人の人間の行動を予測するのは難しいが、多数の人間の行動となると簡単に予測できる。なぜそうかというと、そうでないと社会が崩壊するからだ。
 人間の行動は『普通』という範囲に収まっていて、そこにはきっとなんらかの歴史があるだろう。動物の行動も予測可能だ。はるか昔に進化の過程で生き残って繁栄するために進化した特徴だからだ」


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 本記事は、2017年2月に出版された『富裕層のNo.1投資戦略』(高岡壮一郎著・総合法令出版)の草稿を、ゆかしメディア編集部が編集したものです。
 本記事の完成版はこちらでご覧いただけます。

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