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年俸4000億、リターン149% 豪快運用のデビッド・テッパー【ヘッジファンドマネジャー列伝⑧】

 リスクを恐れず、大きな損失を生んでも、すぐにそれ以上のリターンをあげて取り返す、そんなスケールの大きな運用を行うのが、デビッド・テッパーだ。

 アメリカンフットボールをしていたという、身長180cmを越すガッチリとした体格にふさわしい豪快な運用スタイルで、その数字も豪快そのもの。テッパーの会社「アパルーサマネジメント」は2003年には最大149%というリターンを記録。

 ヘッジファンドマネジャーの報酬ランキングの常連で、何度も1位にランク付けされている。
 2009年報酬額40億ドル(4000億円)は、史上最高に近い金額だ。

すべては、勝つため

 テッパーのスタイルは一貫している。「勝つ」ためにその障害となりうるあらゆるものを排除することだ。
 彼が嫌うのは、投資家の圧力で儲けのチャンスを逃すことだ。「ポートフォリオの判断を下すのはマネジャーであり、投資家ではない」と公言してはばからず、投資家の介入で勝つチャンスを逃したある運用のことを「投資人生の中で最悪のトレード」と考えている。
 彼にとって「損失を出すこと」は悪いことではない。勝つチャンスを失うことこそ悪だ。


テッパーはアメフトチームのオーナーにもなり、
ホームゲームには自家用ジェットで足を運ぶ。
 テッパーは実際に、20%以上の損失を出してきたことも何度もある。だが、すべての取引において最高値を6カ月以内に出してきた。彼の率いるアパルーサは平均28.5%の純リターンを記録している。

「市場がパニック状態になったらアパルーサに来るといい。基準価額が20%下落したときにこのオフィスに来ても、普段と違うところなど何もないだろう。そういう日もあるさ、という程度なんだ。私のもとで投資するなら、私が損失を出しているときが最高のチャンスだよ」
 テッパーは雑誌のインタビューでそのように語った。

 2008年のリーマン・ショックの際もあわてることはなかった。翌年には80億ドルという利益を上げている。40億ドルという報酬はその年のものだ。

 テッパーは、ゴールドマン・サックス在籍時代、何度も昇進のチャンスを逃している。誰よりも高い数字を上げ、会社に利益をもたらしてきたというのに。

 勝つことにしか興味のない彼は、そこまでの意欲を持たない同僚からは煙たがられた。社内の他部門が行っている業務を奪ってもっと大きな数字にしたり、間違っていると思えば会社上層部の怒りを買ってでも通告するといったことを平気で行ってきたため、根回しや、敵を作らず立ち回るといったことにまったく意識が向いていなかったのだ。

 8年間勤めたゴールドマン・サックスをやめると決めた彼は、独立することにした。当時のトレードはアルファベット順にファックスを受け取って注文処理をしていた。
 そのファックスを最初に受け取るためには、社名はAから始まる必要がある。AとZではファックスを受け取れる時間に差ができる。トレードの世界では命取りになることもある差だ。そう考えた。

 当時はギリシャ神話が人気だったことから、ギリシャ神話のペガサスにちなんで馬に関する名前にすることにした。
図書館で馬に関する本を借り、一番最初に出てきた「アカイコス」は発音が難しかったため「アパルーサ」という名前にした。

 テッパーは、損失を恐れては大きなリターンを出せないと考えている。アパルーサはテッパーとパートナーが会社の約55%の資産を所有し、残りの45%は機関投資家や裕福な個人投資家、外国人投資家などが所有しているが、必要とあれば3年間、資産の75%をロックアップできるようになっている。

 これまで実行したことはないそうだが、こうすることで「一時的な投資家」ではなく長期投資をしてくれるクライアントを得ることができ、安定して投資をすることができる。

 すべては「勝つ」ためだ。

 2011年にはファンドが巨大化しすぎたと、テッパーは6億ドルを投資家に還元し、ファンドの規模を120億ドルまで減らした。
「100億ドル程度の資金ならば、大規模ファンドの利点をすべて享受できる。それ以上になると、運用するのが難しくなる」
 彼はそう考えている。

 すべては「勝つ」ためだ。

テッパーの真骨頂、プラス149%のトレード

 テッパーが2003年に記録した149%という成果は、どのようにして成し遂げられたのだろうか。
 当時としては史上最大だった三大企業破たん(エンロン、ワールドコム、巨大保険会社のコンセコ)のディストレス債券の買いで得たものだ。
 破綻し、大きくその価値を下げた会社が破たんから立ち直り、負債の価値が上がることで、安い資産を誰よりも早く自分たちのものにしたことが大きな成果につながった。

「落ちている金を拾え」
 テッパーの運用スタイルを形容した言葉だ。
 2009年、アメリカ金融大手シティグループやバンク・オブ・アメリカ(BOA)などの株価は国有化のうわさで急落していた。だがアメリカ財務省は2月25日、「資本支援計画」(CAP)のウェブサイトで、金融機関への公的資金注入に伴いアメリカ政府が取得する優先株は、取引実勢をはるかに上回る価格で普通株に転換されると表明した。

 転換価格はシティで実勢よりも37%、BOAでは21%高く設定され、テッパーにとって絶好の買い場となった。
 彼は「連邦政府がこの声明を出したとは、金融機関を国有化する考えはないということだ」 と言った。金融機関の株価が著しく過小評価されていると転換価格が示唆した点も重要だった。
「ものすごい状況だった。2月と3月初めには人々は慌てふためいていた」と話す。

 アパルーサは普通株と優先株、下位劣後債を含めて金融機関関連の証券を物色し始め、BOA、シティ、フィフス・サード・バンコープ、サントラスト・バンクスと買い進めていった。また、政府管理下 にある保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)とドイツのコメルツ銀行、イギリス金融大手ロイズ・バンキング・グループの債券も買い入れた。「落ちている金」らしく、額面1ドル当たりわずか5セントで購入したケースもあった。

 それらの株式・債券相場がその後上昇に転じ、2月28日から9月までにBOA株が330%、シティ株が223%にそれぞれ急騰したことで、アパルーサは10億ドル(約924億円)を上回る利益を手にしたのだ。

稼ぎすぎた男の変化

 勝つために全力を注いできたテッパーは、ファンドがすっかり大きくなった昨今、自分の個人資産の運用を任せることも考えていると表明した。資産が大きすぎるがゆえに、運用をやめるわけにはいかない。だから信頼できる人に任せたいと考えているという。

 昨今は寄付にも力を入れる。アメリカ、ウォース・ストリート・ジャーナルによると、アパルーサマネジメントと、ペナントキャピタルマネジメントが組んで、テッパーも住所があるニュージャージー州の教職員組合に対して、このたび制度改革を要望したという。

 アメリカには、優秀な子どもには飛び級などの制度はあるものの、ニュージャージーの教職員においては、人事評価がほぼ年功序列に近いものだという。この人事評価制度を、成果に比重を置いたものにするべきだという意見を出したのだ。
 子どものより良い教育を実践していくためには、肝心の教諭がそれではどうかと疑問を呈した形だ。

 ほかにもカーネギーメロン大学のビジネススクールに多額の寄付を行い、自身の名前が冠され「テッパースクールオブビジネス」となっているほどだ。

 テッパーは教育以外にも、ユダヤ教関連の活動にも大きく寄与している。
「稼ぎが大きくなればなるほど、寄付をする額も増えるだろう」とテッパーは語る。

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