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創業200年、マン・グループ会長は香港人のティム・ウォン【ヘッジファンドマネジャー列伝⑩】

 世界で一番歴史のあるヘッジファンドは、1783年に創設している。
 樽製造者のジェームズ・マンが砂糖の仲介業を始めたことで誕生したのが、最古参にして大手のヘッジファンド、マン・グループだ。

 ジェームズ・マンが英国王室海軍にラム酒を提供する契約を得たことで事業を拡大し、総合商社へと発展していく。その過程で資産運用関係の事業を次々に拡大。
 ニューヨークのミント・インベストメント・マネジメントを買収して、ヘッジファンドとの最初の合併を果たしたのが創業200年を迎えた1983年頃。
 1980年代の後半には、10億ドル以上の資産を誇る企業に成長していた。

 マン・グループの旗艦ファンドは、約180億ドルの運用資産を持つマンAHLだ。オックスフォードやケンブリッジで物理学を研究したアナリストが立ち上げ、1994年にマン・グループが買収した。
 コンピュータープログラムに基づいて、世界中の株や債券、商品市場などに投資するCTA(商品投資顧問)と呼ばれるヘッジファンド。
 金融政策に値動きが左右されない資産に運用先を分散させている。電力市場がその代表例だ。天候・気温などによって発電量や電力需要が変わり、価格も動く。「リスクオン・オフ」とは無縁の世界だ。

 このファンドは長期トレンドの研究に熱心で、保守的に忍耐強く利益を得るスタイルを用いて1996年3月~2010年9月の間の年率リターンは16.7%を記録した。
 ものすごい数字は出ないが、毎年確実に安定した利益を投資家にもたらしていく。

率いるのは天才香港人エンジニア

 まずはマン・グループのベースとなっているマンAHLについて、詳しく述べていきたい。
 マンAHLの会長、ティム・ウォンは香港育ち、金融に関する専門的な教育を受けていたわけではないが、家族や近隣の住民の多くが何かしら賭けをしていた、という環境で育つ。
 頭脳明晰なウォンはオックスフォードでエンジニアリングを学ぶなかで金融に触れ、「ダイナミックな事業に興味があり、科学知識を持っていて、市場価値が好きな人はぜひ応募を」とだけ書かれている広告に興味を持ち、1991年、その広告を出稿していたAHLに入社。
 大学で学んでいたエンジニアリングを、金融の世界に活かしていった。


ティム・ウォン
(マンAHLホームページより)

 2001年にはAHLのCEOに就任。現在は会長となっているが、彼は今でも自分自身をエンジニアだと考えている。

 エンジニアであり、決して数学者ではない。彼の考えはとても現実的で、実践的だ。たとえば、1つのモデルがよい結果を残しているとして、どのようにそのモデルを実践でも再現していくかを考えるとする。
 数学者的なアプローチでは、たとえばリスク要因を計算に入れなければならない場合などは、その数字を2.3にするか2.4にするかといった議論を行うが、ウォンは「3でいいじゃないか」と言う。彼はきちんと機能すれば充分、とだけ考える。
「だからよく、きちんとした数学知識を持った人たちを怒らせてしまうね」とは彼の言葉だ。

 その考えは、運用でもベースになっている。「小さく負けても大きく勝てばいい。短いスパンで多少負けても、長い目で見れば必ず勝つことを目指す」だ。だからAHLは長期にわたる結果を重視する。
「我々は一定のルールに基づいて取引している。マーケットがある方向に動いたら、コンピュータープログラムがどう反応するのか、私や社員が正確に説明できるようにしてある」
 彼は語る。

 もちろんそれでも完璧にとはいかない。金融危機や政治的介入などによる市場の乱高下には対応しきれないこともある。彼の扱う分野は性質的に、どうしてもそのような市場の変化に強くないからだ。
 それらへの対応を強化するために「現在のマクロ環境でよりよい対応ができるように設計された、コンピューター化されたトレードモデルを数多く開発した」という。

 机上の空論には興味のないウォンだが、現実に起こっていることへの再現性の高い対応についてはとことんこだわる。
「多くの人が運用に失敗してしまったケースがあるとして、その場合理由は2つ考えられる。1つは、マーケットがどうしてそのような動きをしているかを投資家に説明することができなかったか、あるいは根本的な運用内容を変更したが損失は回復せずにパフォーマンスを好転させられなかったかだ。

 言いかえれば、この2点についてしっかり対応できることがわが社の優れた点だ。会社が生み出した業績についてよく理解し、さらにボラティリティやリスクについてもよく理解している。

『ヘッジファンドの運用はブラックボックス』という批判を受けることがあるが、わが社に関してはまったく的外れだと考えている。むしろ『透明性の高いボックス』だと言えるくらいだ。
 常に一定のルールに基づいて運用しており、市場の変化にコンピュータープログラムがどう反応するかを、きちんと説明できる。
 人間の裁量に基づく運用のほうが、よっぽど不透明だ」

ルーレットに賭けず、ルーレットを持つ

 長期で確実に利益をあげていく彼のスタイルは、むしろ彼の祖国の香港で受けが良くなかった。AHLが初めてファンドを香港で売り始めたとき、香港の投資家はマーケットの変動に対してあまり忍耐強くなかったという。
「どの投資家も、最初の1年でリターン40%というようなファンドを喜んだ。わが社は3~5年で平均16~17%の利益というようなやり方なので、数字を見せても納得してもらえることは少なかった。
 3~4年ほど続けたことで、ようやく香港の投資家たちも理解してくれるようになってきた」

「ほとんどのトレーダーは、カジノのルーレットで勝つことを目指す。私が目指すのは、カジノを経営してルーレットを所有することだ。
 毎日誰かがカジノで私に勝つ。大勝することもあるだろう。
 だが勝負を繰り返していくうちに、必ずカジノが勝つときが来る。統計的にカジノが勝つようにつくられているからだ。
 そして、この勝つ確率を高めることが、ヘッジファンドの最も重要な仕事なのだ」

 2007年にはオックスフォードと共同で研究所を設立。AHLの社員とオックスフォードの学者たちが日常的に交流し、その精度を日々高めている。

 マンAHLの運用先は400を超え、創業当時の約8倍。より有効な運用手法を巡り今も模索を続ける。

 マンAHLに大きな変化が起こったのは、2010年のGLGパートナーズの買収だ。そのときのことは、こちらの記事に譲る。

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 本記事は、2017年2月に出版された『富裕層のNo.1投資戦略』(高岡壮一郎著・総合法令出版)の草稿を、ゆかしメディア編集部が編集したものです。
 本記事の完成版はこちらでご覧いただけます。

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