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かつて2.2兆円を動かした伝説のヘッジファンドマネジャー、ジュリアン・ロバートソン【ヘッジファンドマネジャー列伝⑲】

 現在のヘッジファンド市場について話をするならば、触れないわけにはいかない存在がある。「伝説のヘッジファンドマネジャー」と呼ばれるジュリアン・ロバートソンと、彼の設立した「タイガー・ファンド」だ。


ロバートソン/Getty Images
 タイガーは1990年代のヘッジファンド市場を席巻、1998年には資産228億ドル(約2.2兆円)を有する、史上最大のヘッジファンドだった。
 ロバートソンも多額の報酬を受け取っており、ファイナンシャル・ワールドが掲載していたヘッジファンドマネジャーの長者番付では、毎年のようにジョージ・ソロスに次いで2位にランク入りしていた。一番高い年の稼ぎは5億ドルだ。

 ファンドは2000年に解散するが、彼が後の時代に与えた影響は大きかった。今なお彼が評価されるゆえんである。

48歳でのファンド設立

 ロバートソンはノースカロライナ大学を卒業後海軍の仕事に就き、その後は投資銀行キダー・ピーボディーに20年以上勤務。

 マネーマネジメント部門の責任者も務めたのち、サラリーマン生活に疲れたと、彼は休暇を取りニュージーランドを訪れる。

 旅先でまとまった時間をつくりじっくりと今後の人生について考えた結果、組織で働くことではなく、自らヘッジファンドを設立し、自分のパフォーマンスのみで評価されることが最も自分がやりたいことだという結論に至る。
 自己資金800万ドルでタイガー・ファンドを設立、そのうち200万ドルが自己資金で、600万ドルは外部からの投資で集めた。
1980年、彼が48歳のときのことだった。

 ロバートソンの手法は、ファンダメンタルズに従っての株式売買だ。
 彼の投資に関する信条は以下だ。

①ファンダメンタルズを重視すること、その会社を買うと考えて株を買うこと、その会社の製品やマネジメントについて知ること
②水晶玉を信じないこと。マーケットタイミングで判断しようとしないこと。ただし、低迷の影響を受けないように、空売りとオプションでヘッジすること
③国内にとどまらず、グローバルな視野を持つこと
④間違ったと思ったら売り、損失を最低限に抑えること
⑤人の逆をいくこと。高すぎる値がついて多くの人が思い違いをしていたら、その銘柄を空売りすること


 ロバートソンはアジア各国の通貨を売り浴びせるなどして恐れられ、ファンドは急成長。扱う額は228億ドルを超え、彼は伝説のファンドマネージャーと呼ばれた。最盛期を含めたファンドの実績は以下のようになる。

1980年 56.30%
1981年 19.40%
1982年 42.40%
1983年 46.70%
1984年 20.20%
1985年 51.40%
1986年 16.20%
1987年 -1.40%
1988年 21.60%
1989年 49.90%
1990年 20.50%
1991年 45.60%
1992年 26.90%
1993年 64.40%
1994年 -9.30%
1995年 16.00%
1996年 38.00%
1997年 70.00%
1998年 -4.00%
1999年 -19.00%
2000年 -14.00%

年平均利益 24.84%


転落、そしてファンド解散

 1998年8月、ファンドはロシア危機で6億ドルの損失を出し、その年の後半には日本円の急騰で20億ドルを失った。
 ロバートソンは、航空、自動車、製紙などいわゆるオールドエコノミー銘柄を得意とし、新しく登場した産業や会社には詳しくなかったこともあり、新しい銘柄には力を入れなかった結果、ハイテク銘柄をいち早く取り入れてウナギ登りの株価で大きく利益をあげていた若いマネジャーたちに水を空けられてしまっていた。

 償還の必要に迫られ、保有株式の売却を行うとパフォーマンスが悪化、さらに償還が必要という悪循環に陥り、2000年4月までに76億5000万ドルがファンドから引き揚げられた。

 2000年3月31日、ロバートソンは引退を表明、67歳だった。彼の率いていたヘッジファンドの資産は60億ドルまで減少し、ロバートソンの所有分は15億ドルだった。

「自分が理解していないマーケットで投資家の皆様にリスクを負わせることは、本来の目的ではありません。よく考えた結果、すべての資本を投資家の皆様にお返しし、タイガーの幕を下ろすことを決断しました」
 やはり新たな銘柄に、彼は詳しくなかったようだ。引退とともに、ファンドの解散も宣言した。

 引退、会社の解散を宣言したロバートソンだが、その後のことはかなりしっかり考えていた。1998年には、モルガン・スタンレーのCFOだったフィリップ・ダフをCOO(最高業務責任者)としてタイガーに迎え入れていた。その目的の1つは、こう計画を明確にして会社を組織化することだった。

 会社は解散するが、会社の形を明確にしておいたことは、その後に大いによい動きを及ぼした。タイガーの解散後も、ロバートソンはオフィスやシステムを弟子たちに引き継いでファンドの創設を助け、さらには自己資金も投入し、後進の指導を積極的に行っていった。

 それがどのような効果をもたらしたかは、この後の記事「アップル、アマゾン、フェイスブック……世界を動かすロバートソンの弟子たち【ヘッジファンドマネジャー列伝⑳】」にて詳しく説明したい。

 ロバートソンは休暇を過ごしたニュージーランドを気に入り、その後移住する。現地にゴルフコースとワイナリーをつくった。
 その凝りようは、つくった2つのゴルフコースがゴルフ界のミシュランと呼ばれるゴルフマガジンの「世界名コース100選」にも選ばれたほどだ。

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 本記事は、2017年2月に出版された『富裕層のNo.1投資戦略』(高岡壮一郎著・総合法令出版)の草稿を、ゆかしメディア編集部が編集したものです。
 本記事の完成版はこちらでご覧いただけます。

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