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リーマンショックの原因? ドイツ銀行出身のワインシュタイン【ヘッジファンドマネジャー列伝21】

 現在、世界の金融や経済に関わる人が大きな関心を寄せているドイツ銀行問題。
 そのドイツ銀行で働いていたヘッジファンドマネジャーを紹介したい。


ワインシュタイン(中央)/Getty Images
 また、「リーマン・ショックの引き金になった」など、「ヘッジファンド=危機の黒幕」説の根拠となっている投資方法についても解説する。その投資方法の草分けとされる人物だ。

 ボアズ・ワインシュタインの起ち上げたサバ・キャピタル・マネジメントはアブソリュート・リターン+アルファ誌によって「業界で最も急成長を遂げているファンド」に選ばれ、ワインシュタイン自身も「40歳未満の注目すべき40人」に複数回選ばれている。

CDSとは何か?

 ヘッジファンドが進化し、「デリバティブ(金融派生商品:金融商品そのものを取り引きするのではなく、商品に派生して生まれる権利などを売買したり契約を結んだりする金融商品)」というものが誕生した。
 デリバティブは種類に応じて細かく分かれており、主要なものの1つが「信用デリバティブ」で、その中でも最も普及しているのがCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)だ。これは簡単に言うと、取引先の倒産に備える保険のようなものだ。

 具体例を挙げて簡単に説明すると、Aという会社が取引しているB社の経営が危ういとする。B社が倒産したら、B社に対する売掛金は焦げ付いてしまうかもしれない。そうなるとA社の経営にもかなりの悪影響だ。
 そこでA社は、ある銀行とCDSの取引を契約する。B社に対する売掛債権が1000万円だとして、A社と銀行は想定元本1000万円のCDS契約を結ぶ。契約の対価として、A社は銀行に毎年一定の保証料を支払う。保証料の額は利率により異なり、たとえば元本に対して年率2%であれば20万円だ。

 もしB社が破綻した場合、A社は銀行から元本相当額の1000万円を支払ってもらえる。
A社はCDSにより、取引先の破綻リスクに備えることができる。銀行はB社が破綻しなければ、定期的に保証料を受け取ることが可能だ。

 このように元々は経営の安定化を目指して誕生した商品だが、CDSは実際の債券を保有しなくても取引ができるため、CDSにより、債券がなくても会社が倒産することで巨額のお金を得られることになる。そのため投機やヘッジファンドに利用されるようになってきた。

信用デリバティブの草分け

 ボアズ・ワインシュタインは幼少時から数字に強く、野球カードに書かれている打率などのデータをたくさん記憶しているような子供だった。
 また、戦略ゲームにも強く、チェスの名人に与えられる「ナショナルマスター」という称号を16歳で授与されたほか、ブラックジャックとポーカーの達人でもあり、2005年にウォーレン・バフェットの招待を受けて出場したポーカーのトーナメントでは賞品としてマセラティを1台獲得している。

 投資の世界でも無類の強さを発揮し、ニューヨーク市民の株選択コンテストに参加し7500人の中から優勝。15歳でメリルリンチにてインターン、18歳でゴールドマン・サックスでアルバイトをした。
 1998年、24歳でドイツ銀行に入ってからは25歳でバイスプレジデント、26歳でダイレクター、27歳でマネジングダイレクターに任命された。

 この頃は信用デリバティブのマーケットが生まれたばかりで、CDSの価格の付け方を構造から理解している人はほとんどいなかったという。
 若く、数字と戦略に強いワインシュタインは、新しい世界に取り組んでいった。「買う・売る以外に使える投資手段がたくさんある」ことがこの分野の魅力だと彼は言う。

 ワインシュタインがドイツ銀行入行直前の1997年、アジア通貨危機が発生、韓国の銀行が崩壊寸前になった。タイのバーツも危機を迎え債務を支払えなくなり、ロシアも債務不履行、巨大ヘッジファンドのLTCMが崩壊、アメリカやヨーロッパ、日本の銀行なども大惨事一歩手前までいった。
 ワインシュタインは信用デリバティブを安値で買っていたため、このときにそれらのポジションを収益化。ドイツ銀行に多大な利益をもたらした。
 それからCDSのマーケットは急速に拡大。ワインシュタインはその後も大きな利益を生んでいく。

ワインシュタインと金融危機

 ドイツ銀行のワインシュタインのチームは、CDSを中心に利益を確保。その様子はだんだんとヘッジファンドの体をなし、ほかの投資銀行もワインシュタインのチームをヘッジファンドだとみなすようになってきた。
 そのような流れもあり、ワインシュタインもヘッジファンドとしての独立を目指し、2005年にはその意向を伝えていた。
 それでも一番の稼ぎ頭を失いたくないドイツ銀行は、報酬やポジションなど有利な条件をいろいろ提示し、彼を引き留める。ようやく独立が認められ、あと1年だけ働く、となった最後の年が、2008年だった。

 ワインシュタインのドイツ銀行最後の年は、リーマン・ショックでマイナス18%を記録した。ワインシュタインがマイナスを出した初めての、そして唯一の年となった。

 その後彼は独立する。ドイツ銀行時代の高い実績から、投資のための資金はすぐに集まり、50億ドルを調達できた。長年準備をしてきた(むしろなかなか独立させてもらえなかった)ことで、独立からわずか6週間で投資を開始することができた。

 その後彼は信用デリバティブの1つ、「リカバリースワップ」という商品を考える。CDSは「破綻したとき」に備えたものであるのに対して、「破綻したときの損失額」をヘッジするものだ。
 トレードに参加する双方が同意して、あらかじめ回収額を確定する。そこの折り合いがつけば双方にメリットがあることから、CDSと異なり手数料を支払う必要がない。これにより、リスクを小さくし、破綻を避けられたなどすれば大きなメリットがある。

 これらのデリバティブを活用し、ワインシュタインは利益をあげている。2011年にはほとんどのヘッジファンドが損益ゼロかマイナスで終わったなか、サバの旗艦ファンドは9.3%の利益を記録した。

デリバティブ、特にCDSは欧州金融危機の原因をつくったのか?

 CDSは一般的な保険等とは異なり、債券を保有していなくても取引が可能だ。そのためCDSの扱う額が大きく膨らみすぎていたところはある。
 また、大規模な経営破たんが続くようであれば、CDSを販売していた金融機関はその都度支払いをする必要があり、経営を圧迫していた。

 保険会社は掛け捨ての保険料が支払われないことで成り立っており、加入者全員が支払った保険料以上の保険金を失ったら倒産してしまう。
 実際、リーマンが破綻したことでアメリカ保険会社のAIGはリーマンを対象とするCDS関連商品の保証をしており、リーマンの破綻によりAIGの保証負担は膨らみ経営危機に陥った。
 AIGが破綻すれば、AIGからリーマンに関連するCDSを購入していた金融機関が保証を得られないことになり、多額の損失を抱え連鎖的に破綻する危険もあった。
 政府によるAIGへの公的資金投入でその危機は脱するが、CDSの取引残高はその後減少する。

 その後の世界的な金融危機でも、CDSは取引工程の不透明さから市場に混乱を引き起こすこともよくあり、取引は契約者間の相対清算から清算機関での清算へと環境整備が進むことになった。

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 本記事は、2017年2月に出版された『富裕層のNo.1投資戦略』(高岡壮一郎著・総合法令出版)の草稿を、ゆかしメディア編集部が編集したものです。
 本記事の完成版はこちらでご覧いただけます。

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