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リスク管理の鬼、ブルース・コフナー【ヘッジファンドマネジャー列伝25】

「自分の考え」には固執しない

 活躍が派手な人が目立つのは世の常で、ヘッジファンドでも、ものすごい運用成績を残した人物が注目を集めたり「カリスマヘッジファンドマネジャー」と呼ばれたりしている。
 そのような世界で、マクロの大御所、ブルース・コフナーは、ある意味では「ヘッジ(損をしない)ファンドマネジャー」の本流と言える人物かもしれない。

 あらゆる手を使って損失を生まない、リスクを減らすことに力を注ぐ。自分の考えにはまったく固執しない。常に市場が正しいと徹底して考えている。
 彼の設立したキャクストンは評価額120億ドル、年平均リターン21%を記録している。彼自身の資産は53億ドルとなる。
 現在71歳の彼は2011年に引退し、現在はプライベートな運用のみ行っている。

 彼が目指すのは「絶対リターンの追求」だ。
 取引するのは株式市場と相関性のないもので、分散化を重視している。そのときの政治、経済などの環境をよく見て、うまく時流をとらえる、伸びるものに投資することを目標としている。

「マクロの第一人者」という周りからの評価も、本人はどうでもよいと思っている。それよりも、大切なのは多くのマーケットをうまく活用してリターンをあげることだ。やりかたにはまったくこだわらない。重視するのはポートフォリオのバランスだ。バランスがよければ、もし判断が間違っていた、予想だにしない経済や政治の動きが生じた場合も損失を少なく済ませることができるからだ。

 アプローチ方法も1つに固執しない。多様で確実な収益源を求め、リスクと相関性をコントロールする。様々な方法に対応したトレーディングセンターを20以上も設置している。

 コフナーは言う。
「ある特定の環境が永遠に続くと考えるのは間違っている。そして、大衆的な判断になることを避けなければならない。その時期に最適のトレーディングスタイルを見つけて、それに集中できるようにすること。それこそが大事なことだ」

 コフナーは「自分のスタイルはこう」と言われることを好まない。自分の意見も状況に合わせてフレキシブルに変えていきたいと考えている。

 レバレッジに関しても非常に慎重だ。レバレッジは諸刃の剣であり、失敗すれば損失も大きい方法だからだ。行ってよいかを入念に確認する。

 コフナーは常にリスクを想定している。株式に大きな変化があったら、金利の変化や政治的イベントが発生したらどうなるか、を常に検証しているのだ。

 ではリスクをとることを好まないのかというと、決してそのようなことはない。投資対象に対して、会社の流動性の限界内にあるうちは、資金をつぎ込む。限界に達すると引き上げる。

 リスクを一切負わずに投資をすることなど不可能だ。頭のなかで考えていたことと現実は異なることもある。むしろ異なることのほうが普通だ。
 そのため、損失を生むことは構わない。損失が発生した際は、なぜそうなったのか、どこに間違いがあったのかを調査する。
 チームには「ここまでは損失を生んでも構わない」という一定のリスクレベルを定め、そのレベルの範囲内でチームは取引を行う。

 コフナーが時間と労力を割くのは戦略の開発、リスク・コントロール、リスク配分だ。
「私の役割はほかの人に取引をさせて、資源を配分することであり、うまく機能する構造を開発することです。そしてビジネスを成長させていくのです」
 彼はそう語る。

 そして、判断を下すための情報収集には労を惜しまない。正確な情報を収集できるよう、タンカーを3隻も保有している。タンカーでどのような情報を収集しているかはわからないが、タンカーがもたらすのは重要な情報源だという。

 彼は言う。
「投資に関する機会は以前よりも増えています。金融市場が発達すると多くの手段が現れます。目的に応じて様々な投資の手段が登場するのです。

 生き残ることができるのは、新しいマーケットや情報テクノロジーに適応できる人、そして厳格なリスク・コントロールを実行する人です」

リスクにこだわるようになったきっかけ

 なぜ彼はこれほどまで、リスクのコントロールにこだわるのだろうか。彼の経歴を見てみよう。

 ブルース・コフナーは1945年、ニューヨークのブルックリンに生まれた。両親は東ヨーロッパからの移民だ。
 ハーバード大学と大学院では政治と経済を学んでいた。
 そのとき指導を受けた教授たちの教えから「世の中には自分が知らないことがたくさんあり、またそのことを認識しなければならない」と理解した。

 また、「自分のやり方」よりも「現実的に有効な戦略を見つけて採用する」ことを重視するようになった。
 その後はハーバードで教壇に立つなどし、ハーバードやペンシルバニア大学などの政策問題のコンサルタントを務めていたこともある。一時期はタクシー運転手をしていたこともあるなど、その経歴はユニークだ。
 学術的な仕事を続けていたことにも飽き、1977年、マスターカードで3000ドルをキャッシングして、独自にトレーディングを始めた。銅と金利先物で1000ドル儲けることに成功した。

 その次の取引が、彼の後々の取引に大きな影響を与えることになる。それが大豆マーケットだった。大豆が不足し、6週間で4000ドルのポジションが4万5000ドルに急騰した。
 彼は最終的に2万2000ドルの多大な利益を得ることになるが、彼は手放す1時間前にそれまでの利益の半分、2万3000ドルを失ってしまう。
 原因はリスクの管理不足だった。儲けを手にしたとはいえ、同時に失ったものの多さから、1週間は精神的に立ち直ることができなかったというが、その大きな損失でリスクというものと、リスクをコントロールする必要性を理解した。

 彼はトレードの実績を引っ提げ、コモディティーズコーポレーションという、後にゴールドマンサックスに買収されるヘッジファンドに雇われ6年間勤務することになる。その後の1983年、自身のファンドを設立する。

 コフナーにリスクへの意識を身に着けさせたのは、大学の教授たちの教えと、投資の痛い失敗によるものだったのだ。


ジュリアード音楽院のイベントに参加する
コフナーと妻のスザンヌ/Getty Images
「キャパシティを超えてまで成長したいとは考えない」
 ファンドの経営をしていたときからそう言っていた彼は、ファンドも大きくなりすぎると官僚主義化するため、規模を大きくしない方向に舵を切った。

 同時に言っていた「私がいなくても機能する会社、私の意見を必要としない会社にする」を実現し、引退した。

 彼は慈善事業や寄付に熱心で、多くの学校法人基金の委員を務めている。学校改革の基金を600万ドルを投じて設立したり、ニューヨーク市の収入の少ない家庭の学生が私立校に通うことができるための奨学金を付与したりしている。

 趣味は音楽で、ジュリアード音楽院の活動に参加し、音楽を聴くだけでなく演奏もしている。

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 本記事は、2017年2月に出版された『富裕層のNo.1投資戦略』(高岡壮一郎著・総合法令出版)の草稿を、ゆかしメディア編集部が編集したものです。
 本記事の完成版はこちらでご覧いただけます。

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