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2017年、原油価格は一体いくらになる?

最悪のシナリオは中東で戦争、石油供給ストップ

 このほかに、今後大きく原油価格を動かし得る要因として、さすがに可能性は低いと思われるが、サウジアラビアの内戦勃発が考えられるので、そのことにも触れておこう。

 原油価格の下落が続いていることで、サウジアラビアの財政は手元のキャッシュが足りていない厳しい状態になっている。かの国は元々暑い気候であり、そう残業までして熱心に働く国民性でもない。

 国は今までのオイルマネーで充分に潤っていたため、サウジアラビア国民の生活は非常に恵まれていた。政府からの様々な社会インフラの提供、王立の病院や学校や福祉関係は無料だったほどだ。

 それが、この度生活のいろいろな面で支払いが必要になった。それまで無料だった様々なインフラ費用も、徴収されるようになったのだ。
 インターネットの接続環境も国営の通信会社から繋ぎ放題のプランが撤廃され、使ったデータ分だけ支払い、という形に切り替わるなどの不自由が生じている。

 物価は上がり、それまで裕福な家がどこも雇っていたフィリピン人のメイドやドライバーが、「今のままでは生活できない」と待遇改善を求めるストライキを起こしているほどだ。

 このように、サウジアラビア国民の不満の種は多く、大きくなっている。さらに、サウジアラビアは現在内戦が続いているイエメンに隣接している。この内戦にサウジアラビアは現政権時より干渉し、早期に解決するかと思われたが目算を外し現状、泥沼とも言える戦況となっている。

 このイエメン内戦に関する膨大な戦費のために、様々な予算が削減されている。目立ったところでは教育関係の予算が大きく削減され、海外に留学する学生への支援が打ち切られサウジアラビア留学生の生活が苦しくなる、という事態も起きている。

 実際、サウジアラビアのサルマン国王がアメリカを訪問した際、アメリカに留学しているサウジアラビア学生が連盟で国王に留学生への資金援助を求めた、などの出来事もある。


Getty Images
 サウジアラビア国内で内戦が起こった場合、どうなるか? サウジアラビアに精通している人物によると、2つのパターンが考えられるという。

 まずサウジアラビアの王族内でクーデターが発生した場合。王族の人間であれば、外貨を稼ぐための石油の重要性は理解しているので、石油の価格を安定、シェア確保するうえでも、内戦のさなかでも石油を供給する努力は行うだろう。

 過去にサウジアラビアでは王族内におけるクーデターはあった。国民に支持される王族のメンバーが国家を刷新する、「維新」という形でクーデターを行い、さらにそこへ外国の支援を取り付ける、などが考えられる。

 王家とまったく関係ない、市民レベルで発生した場合、どうなるかはまったくわからない。
 現政権に不満を持つ市民の多くを動員し、軍隊までも掌握できるような王族以外の政治家や識者は、サウジアラビア国内では特筆して挙げられる人物はいない。基本的に各省庁や軍隊などのエリートは王族メンバーに直結しているからだ。

 地政学的な面からもサウジアラビアは地理的に紅海、ペルシャ湾を押さえている場所にある。
 可能性は低いとはいえ、内戦によりそれらの海が封鎖されるようなことになれば、サウジアラビアの石油だけでなく、中東全体の石油、天然ガスが流通しなくなる可能性もある。
 そうなった場合、世界の60~70%に及ぶ石油が止まることになる。

「石油が高いならシェールガス」の流れとはいえ、それはあくまでもエネルギーに選択肢があるときの話で、エネルギーのほとんどが入手不可となったら、状況は変わる。
 いくら生産が盛んになっていても、シェールガスだけで石油の空白を埋めきることはできない。シェールガスも不足して需給のバランスは崩れ、一気に値上がりするだろう。
 わずかに流通する原油の価格は大幅にはね上がり、製造、インフラ、通信などあらゆることに混乱をきたす。そうなれば、日本だけでなく、世界が大混乱に陥ることになるかもしれない。

 世界の歴史を見ても、100年世界大戦がなかったことはない。太平洋戦争もエネルギーが焦点の1つであったように、エネルギーは戦争の種になりうる。中東発のエネルギー戦争といったことも考えられなくはない。

 アメリカがトランプ政権で、中東のことには関与しない、解決は自分たちでとなった場合、戦火は飛び火して拡大、アメリカが関与しようと思った頃にはもう手がつけられないレベル、という可能性はゼロではない。

 さすがに実現可能性は低いが、最悪の可能性を知っておけば、何かがあったとしても心構えができている分、大きな失敗はしなくて済むと言えるだろう。
「原油価格変動の理由はこれ」とわかってさえいれば、多少の変動で一喜一憂せずに済む。

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【加谷珪一】(かや・けいいち)経済評論家
 1969年仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
 著書に『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『新富裕層の研究-日本経済を変えるあらたな仕組み』(祥伝社新書)、『お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか』(朝日新聞出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
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