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百貨店業界、なぜ三越伊勢丹だけが一人負け?

 三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長(61)が、3月末に退任する方針を固めた。同社は後任の社長として杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が昇格する人事を正式発表した。
 大西氏は任期途中の平成 29 年 4 月 1 日付で代表取締役社長執行役員から取締役に役位を変更し、同年 6 月開催予定の定時株主総会をもって取締役も退任する予定だ。
「百貨店が苦戦するなかでも伊勢丹は強い」などといわれてきたが、主力の百貨店事業が振るわず、2017年3月期の営業利益は前期比28%減の240億円と大幅減益の見通し。

「消費者の百貨店離れ」が盛んにいわれるようになったなか、高島屋は17年2月期の営業利益見込みで3%増、大丸松坂屋のJ.フロントリテイリングが6%減にとどまっているのに対し、その業績の悪化ぶりは目立っていた。
 大西氏の退任は、業績悪化の責任を取ってのものだ。

 三越伊勢丹の失敗の原因はなんだったのか? 古くからの顧客に取材し明らかにする。

かつて時代を先取りしていた伊勢丹

「デパートは基本的に、店に来る客を客だと思っていない。客だと思っているのは伊勢丹だけ」
 デパート業界に詳しい人の言葉だ。外商の販売員がなじみの客のもとへ足を運び、注文を取り、商品を届ける。注文の額も大きく、定期的で安定した売上が見込める優良顧客なことから、どのデパートも外商に注力する一方で、店舗はショールームか、小さな売上の立つところ程度に考えていた。

 外商はバブル期に大きく売上を伸ばしたが、バブルの崩壊に伴いそのうまみが失われ、縮小していった。それでも一度に立つ売上が大きいことから、ほとんどの百貨店は対応が遅れ、外商にこだわったために苦戦することになる。

 いち早く“脱外商”を果たしたのが伊勢丹だ。店舗に来店する客を重視。ほかの百貨店が販売スペースを「売り場」と呼ぶのに対し、「お買い場」と呼び、「お客様が買ってくださるための場所」と位置付けている。

 当然、そのような姿勢は顧客の支持を集める。「伊勢丹だけが売れる」といった神話にもつながっていった。

三越との合併が転落の始まりだった?

 大きな変化があったのが、2008年の三越と伊勢丹の合併、三越伊勢丹ホールディングスの発足だ。

 古くからの伊勢丹の顧客はこの合併を「何も良いところがなかった」と語る。
 その顧客の言葉だ。
「三越は、日本橋や銀座のお店には行くけれど、それ以外のお店との差が激しすぎる」
 その顧客が、主に使ってきたのは伊勢丹であることは考慮する必要があるが、三越の店舗に大きな差があることは間違いない。都心部でも新宿、池袋などいくつも三越が閉店してきたほか、最近では三越の郊外の店舗の業態変更、閉店が続いている。
 最近の閉店は三越の店舗が多かったことから「伊勢丹出身の大西氏が伊勢丹を優遇しているのではないか」と旧三越側から反感を買っているという報道もあった。


日本橋三越本店
 ほかにも、三越と伊勢丹でそれぞれカードを発行してきたが、合併してエムアイカードになってからというもの、これも伊勢丹ユーザーには評判が悪い。

 たまたま口座に現金が入っておらず、カードの引き落としができなかったときも、伊勢丹のカードであればそれまでの購入実績等から買い物ができたのが、三越と一緒になってからは、問答無用で使用がストップし、カード利用による割引が受けられないといったことが起こった。

 三越はもともと、富裕層を中心とした優良顧客とのつながりが濃く、伊勢丹とは正反対の「お客様とは外商が伺うところ」の百貨店だ。
 合併当初は、それぞれの良さを活かし、足りないところを補い合えることが期待されたが、ふたを開けてみるとよさをつぶし合っている面は否めない。

伊勢丹新宿本店が完全にブレーキ

 それでも、地方の店舗が多少ふるわなくとも、旗艦店がしっかり売り上げられていればそれらの不振をカバーでき、全体を好調にできていたが、最近では三越伊勢丹の屋台骨を支えてきた巨艦店舗、新宿本店が振るわない状況になり、そのことが同社を苦しめている。

 新宿本店は2012年6月から2013年3月にかけて総額90億円の大規模リニューアルを実施した。ちょうど大西氏が三越伊勢丹ホールディングスの社長に就任した年だ。
 年齢別のフロアからライフスタイルに合わせたフロア構成の変更や、自主編集売り場を拡大し、婦人のシューズ売り場を1.5倍に広げるなど、「ファッションの伊勢丹」を全面的に押し出した改装だった。

 この改装も古くからの顧客には響かない、むしろ顧客離れを招くものだったようだ。「買いたいものがなくなった」「どこに何があるのかわかりにくい」「前のほうがよかった」という声も多かった。

 それでも改装直後の物珍しさと、2013年には東横線が副都心線と直通になったこともあり、2014年3月期の新宿本店の売上高は、2654億円と前期比で12.1%増となった。
 東横線ホームの場所が変わり、地下深くなったことで渋谷駅が使いにくくなり、それまで渋谷で下りて東急や西武などのデパートに行っていた人がその手間を嫌い、そのまま乗って行ける伊勢丹新宿本店に来るようになったためだ。
 
 だがその後の翌2015年3月期は2585億円と2.6%減。予想の4.9%プラスの2711億円を大幅に下回る結果となった。地理的なメリットを活かしきれない形になってしまった。

 2016年4月~12月期で、伊勢丹新宿本店の売上高は、1979億6900万円と前年同期比2.8%の減少とさらなるマイナス。加えて三越日本橋本店の売上高も1261億6500万円で、2.2%減、三越銀座店は599億4300万円で6.9%減と苦戦した。

インバウンドの逆効果

 昨年春時点の期初予想では、伊勢丹新宿本店の2017年3月期の売上高は、2期連続の増収を見込んでいた。しかし、ここ数年の売上に大きくかかわってきた中国人観光客らのインバウンド消費が急落したとことに加え、主力の衣料品も不振から立て直し切ることができなかった。

「中国の爆買いが収まったことが百貨店に痛手だった」といった報道が多々なされたが、それは半分正しく半分間違っている。

 あるデパートの顧客は、店員が中国人客の相手ばかりし、ようやく自分の番になったと思ったら中国人の店員にぞんざいな対応をされ、かつての丁寧な接客をする百貨店がもうそこにはないことを悟り、離れていったという。

 大量に押し寄せ、草原を食い尽くすイナゴのようにものすごい勢いで商品を買っていく中国人旅行者の姿は、デパートで丁寧な接客を受けながら落ち着いて買い物をしたいという本来の層が、デパートから離れるきっかけをつくってしまっていた。
 確かに中国人観光客が百貨店で大量に商品を購入することで大きな売上は立っていたが、それに味をしめた百貨店がインバウンドに注力しすぎた結果、それまでの顧客が離れていってしまったことのマイナスは果てしない。
 中国人客がいなくなったとき、同時に日本人客もいなくなっていたことに、気づいたときにはもう遅すぎた。

 そのほかにも三越伊勢丹の苦境の1つに「消費者の百貨店離れ」があると盛んに報道された。ファストファッションの台頭など、百貨店にとって苦境となる部分が多かったのは間違いない。

 だが、先述の通り高島屋やJ.フロントの数字を見るに、そこまでの落ち込みが存在しないことからも、これまででは考えられなかった「三越伊勢丹の一人負け」状態になっている。そうなると問題は百貨店にというよりも、三越伊勢丹にある。

 三越伊勢丹は、これまでを支えてくれた顧客の期待に応えることができていたのだろうか? 方針が的確だったのかについて検討する余地があるだろう。そこをしっかり検証せず、経営者の首だけが変わっても、これまでの二の舞になりかねない。

 三越伊勢丹のこれからに、注目が集まる。

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