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相続で銀行の言うことを聞くと大損する

 富裕層の誰もが頭を悩ませる「相続」相続税額の多さもだが、実は「相続関連ビジネス」の食い物にされている富裕層が多い。
 銀行の「相続対策をきっかけに銀行がお金を継続的に奪っていく仕組み」に乗せられている人がたくさんいるのだ。
 一般社団法人相続終活専門士協会理事の江幡吉昭氏に話を聞いた。

提案が的確なのは理由がある

「相続というのは、ほとんどの人にとって、そう何度も経験するものではありません。そのため“よくわからない”部分が多く、専門家と名乗る人の“普通はこのくらい費用がかかります”という言葉を鵜呑みにして、高い報酬を払ったり、支払う必要のない出費をしていたりする事が多いのです。

 資産が何十億円とある人には、まず間違いなくメガバンクや信託銀行から営業がいきます。それも『お客様の資産額を考えると……』というように、頼んでもいないのに自身の財産を的確に記した提案があります。
 銀行はお客様の口座の金額を把握していますから、的確なのは当たり前です。
『預金金額を知っている銀行員が、その顧客の買える範囲でできるだけ大きな金額の商品を買ってもらう』というずいぶん楽な営業なわけです。

 銀行が相続問題を抱える富裕層に、最初に行うのは『ローンで不動産を購入してマイナスの財産をつくりましょう。そうなれば相続税が減りますから。必要な資金をお貸しします』という営業です。
 不動産は基本的には購入価額よりも相続税評価額が低くなるため、相続税対策として正しいものではあります。銀行の本分とも言える融資の提案ですね。
 こうしてまず、融資による利ザヤを得ます」

続く手数料地獄

「相続対策のための不動産購入のメリットを顧客に理解させながら、銀行は不動産を提案し、購入となります。このとき銀行には、不動産取引手数料が入ります。不動産価格の3%プラス6万円です。

 不動産を購入したならば『火事が怖いですから、火災保険に入りましょう』となります。一棟まるごとの火災保険ですが、規模によっては年間数十万円ということもあります。もちろんこれはこれで必要なものだとは思います。

 次に、銀行にお金を借りている手前、反故にしづらいため、生命保険にたくさん加入している方も多いです。それらの保険は、成約すると銀行が保険会社から販売手数料を受け取る形になっています。
『あなたのため』と勧めてくる保険は、誰でもなく銀行員のためなのです」

遺言は銀行の金食い虫

「相続対策で非常に重要なのが『遺言作成』です。自分で書いた遺言は不備があると無効になる可能性がありますので、確実なものを公証役場で作成してもらう『公正証書遺言』を作るのがベターです。
 これも銀行が作成を代行してくれます。費用は安いコースで20~30万円、手厚いもので100万円が相場です。
 実は、被相続人が自分で公証役場に行けば、公証人の費用以外は無料で作成できるものです。誰でも簡単にできることで、大した手間ではありません。それに銀行は20~30万とか100万という費用を乗せているのです。

 さらに、遺言には遺言を執行する、『遺言執行者』を任意で選任することができます。たいていのケースにおいて、銀行は遺言執行者になることを要求してきます。ここでも遺言執行の手数料が発生します。費用はだいたい相続金額の1%前後です。

 しかも銀行は揉め事になりそうな案件の場合は遺言執行者の就職を辞退することもあります。また、遺留分を大きく侵害するような遺言の内容の場合は、遺言執行者にそもそもならないケースもあります。

 そして、相続発生時に、相続税の申告でもつながりのある税理士を紹介してきます。相続税申告が済みましたら、その税理士から紹介手数料をもらう形です。

 このほかにも、上記のような業務である程度の関係が築けると、銀行員は投資信託などを勧めてきます。そこでも受け取るのは販売手数料です。

 極めつけは『相続手続き代行サービス』です。相続財産が1億円以下の場合、1.62%前後の手数料を支払うことで受けられるサービスです。
 このサービスの主な内容は、『必要な書類を収集する』ことです。戸籍抄本などは集めるのに手間がかかりそうですが、今の時代、郵送や電話、インターネットで集められるものがほとんどです。自分でも、できることばかりです。もちろん全部丸投げしたい方には値段に目を瞑れば便利といえば便利です」

なぜ銀行がボロ儲けできている?

「相続発生前から発生後にかけて、銀行から継続的にお金を取られていく流れを説明しました。金額を合計すると、数百万円から財産規模によっては数千万円になるのではないでしょうか。銀行への支払いが増えるとは、相続財産が減ることを意味します。相続人にしては、たまったものではないでしょう。そもそも、これらの報酬が相対的にみて安いか高いかを説明してくれることはありません。

 そもそもなぜ、このような売り手にとって都合の良い商売がまかり通っているのでしょうか? 原因は『相続マーケットの拡大』にあります。相続税法が改正され、相続税を支払う対象者が増えたことに起因します。
 相続税法が改正されてまだ3年ですから、報酬に関してはまだまだ価格競争が起きていない部分があり、商売をする側にしてみれば、楽して儲けられる“おいしい”ところがまだまだあるわけです。

 資産規模が自宅と現預金で1億円くらいまでの方は生前贈与と生命保険を活用し、小規模宅地の特例を使用すれば相続税対策としては充分ではないでしょうか。よくいわれるような代々住み慣れた家や土地を奪われるようなことにはそうなりません。
 ただし、会社経営者など相続財産が多い場合は別の対策が必要になります」

「相続対策で金庫株」の罠

「このほかに、中小企業のオーナー社長の相続対策で銀行がよく提案してくるのが自社株対策です。
 オーナー社長が持っている自社株の評価が高いと相続税が高くなるので、銀行が社長に対し『社長個人が持っている自社株は会社に買ってもらいましょう。会社が株を買うための費用は銀行が融資します』と言ってくるのです。いわゆる“金庫株”です。

 会社が自社株を買う前には、一旦、自社株評価を下げるべきです。
 しかし、銀行は融資する額を多くしたいので、そのような方法があることは決して言いません。
 また、推定される相続税が仮に10億円かかる会社経営者がいるとします。もし何も対策をしなければ相続発生後、手許現金がなければ銀行に10億円借りて相続税を払うことになるでしょう。一方で、銀行は相続税10億円を減らすために『30億円の融資をしますので相続税対策で不動産を買いましょう』というようなケースもしばしば見られます。一概には言えませんが、どちらが果たしていいのでしょうか。

 社長に少しでも知識があったり、財務責任者など番頭に詳しい社員がいたりすれば、提案を受けても『金庫株よりも自社株評価を下げるほうが効果的では?』と返せば、銀行員も安易な提案はしてこなくなるのではないでしょうか」

相続で銀行を効果的に利用するポイント

「このように相続では銀行を頼っても割高なケースがほとんどですが、銀行に関して、1つ利用価値のあることがあります。
 それは『相続税額のシミュレーションを無料で行ってもらえる』ことです。

 一般的には税理士事務所などに相続税のシミュレーションを頼むとそれなりの費用が発生します。しかし土地持ちの方や会社経営者の場合、銀行が無料でシミュレーションを行ってもらえる場合があります。ですので現状を把握し、打つべき手を考えるために銀行に現状分析をしてもらうことはお勧めできると思います。
 もちろん銀行はその後のサービスを受けてもらえることを見越して無料にしていますが、断ることに問題はありません。

 その他銀行との付き合いのポイントとして、複数行と取引をすることが大事です。銀行間で競争が起こることで、銀行も他行に取られるならばと努力し、融資の条件が良くなるケースもあります。

 あとは、先ほどもお伝えしたように信頼できる専門家に頼んだり、それが難しい場合も、銀行以外の人の意見を聞くなどして、銀行の言う『フツウはこうです』を鵜呑みにしないこと、それが大切です」

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江幡吉昭

 1999年大学卒業後、住友生命保険を経て、英スタンダードチャータード銀行に入行。最年少シニアマネージャーとして活躍後、平成21年、資産家の税務・法務・財務・資産運用の問題解決を図る専門家集団を束ねるファミリーオフィスを設立。主に相続・事業承継等の問題を顧客側の視点で解決する。
 現在、株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役。アレースグループ代表。また相続の現場を通して「争族」を多数経験したことで、相続争いを回避するため一般社団法人 相続終活専門士協会を設立。一般社団法人 相続終活専門士協会代表理事。著書に『広い土地を引き継ぐ人のための得する相続』(アスコム)

一般社団法人 相続終活専門士協会
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