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Brexitとヘッジファンド

 今年に入り、通貨を投資対象とするヘッジファンドの運用が好調だ。

 その要因の一つとしてEU離脱不安により売られている、英ポンド安が考えられる。Brexit派のヘッジファンドの代表格であるOdey Asset Managementの創設者であるオデイ氏は、ボリス・ジョンソン氏に10,000ポンドを寄付した。

 2016年の国民投票の際も87万ポンドを離脱派に寄付し、その後離脱派が勝利した結果英ポンドが下落したため一晩で2億2,000万ポンドを稼いだという。



ポンド円チャート


 現在のポンド安はなぜ起きているのだろうか。そして今後どうなるのであろうか。イギリスの政治情勢を確認していこう。

2016年国民投票とキャメロン元首相の誤算


 43歳7ヶ月で首相となった保守党のキャメロン氏は若き改革者としての期待が高かったが、その政権運営は困難なものであった。保守党は2010年の選挙で13年ぶりに政権を奪取したが、下院での単独過半数に届かなかったため、新EU派の自由民主党と連立を組んで誕生した。離脱派が多い保守派の中にあって、キャメロン氏は親EU派であったのは自由民主党との連立によるところも大きかったと思われる。

 当時はリーマンショックの影響もあり、世界的に経済は混乱していた。そうした中、EUではギリシャやイタリアの財政問題が噴出、PIIGS危機が叫ばれた。EUは加盟国に対して緊縮財政を要請、キャメロン政権も消費税増税や、歳出削減を実行した。これに対して国民の不満が噴出、EUに対して懐疑的な議論が強まっていった。

 2014年の欧州会議選では欧州懐疑派のUKIP党が地方選で躍進、労働党の20席や保守党の19席を超える24席を獲得した。これにより、保守党内本流のEU離脱派の動きが活発化し、支持率の低下とともに徐々にキャメロン氏の力が弱体化していくこととなる。

 保守党内では少数派ではあるが、国民の多くは残留派であると考えたキャメロン氏は、党内での統率力を復活させるために国民投票の実施を公約して、2015年の総選挙に臨んだ。当初保守党の単独過半数は難しいと考えられていたが、国民投票の実施という公約が、EU離脱派の支持を受け、保守党は選挙前の302議席を上回る330議席を獲得し、650席のうちの単独過半数を占めることになった。反対に連立を組んでいた親EU派の自由民主党の議席数は56議席から8議席大きく減らした。この選挙の結果は親EU派との連立政権を前提としていたキャメロン政権にとっては大きな誤算となった。

 そして2016年6月23日の国民投票の結果は、多くの予想を反して48%対52%で離脱派の勝利で終わり、キャメロン氏の退任とメイ氏の首相就任へと動いていくことになる。

2つの離脱派


 EU離脱派には大きく分けるとソフトBrexit派とハードBrexit派の2種類に分けられる。メイ元首相はソフトBrexit派、現在のジョンション首相はハードBrexit派に分類できるだろう。EU離脱後もEUの影響を受けることになるソフトBrexitはハードBrexit派にとって、完全なBrexitとは言えないと考えている。そのためソフトBrexit派のメイ氏が提出した3度にわたるEU離脱案は、EU離脱反対派だけでなくハードBrexit派の議員の反対によりにより否決に追いやられることとなった。

 メイ氏の後を継いで首相に着いたジョンソン氏は、就任後に10月31日までにEUを離脱する計画を推し進める考えを表明した。

 しかしその後度重なる提案は、今度はEU残留派だけでなく、ソフトBrexit派の反対にあい、否決が続いた。そして9月9日には「英国のEU離脱延期を求める法」が成立、10月19日までにEUとの新たな離脱協定案が議会で承認されない場合、来年1月末までの期限延期をEUに求めるようジョンソン氏に義務づけることが決まった。

 メイ氏がジョンソン氏になったとしても、残留派、ソフトBrexit派、ハードBrexit派の三つ巴の中では安定した多数派を獲得することは難しく、今後も議会は空転を続ける可能性が高いといえるだろう。

そろそろポンド安も終了か


 ヘッジファンドのブルーベイ・アセット・マネジメントは、8月に3年間続けてきたポンドのショート(売り持ち)ポジションの解消を決めたとBloombergは報道している。

 ブルーベイ・アセット・マネジメントは、今後ジョンソン氏の求心力が失われ、合意無き離脱によるリスクが後退することで、安くなっていたポンドの逆流が始まると考えているようだ。今後ロングポジションに転換することも示唆している。実際9月に入りポンドは少し値を戻し始めている。


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参考文献:イギリスの失敗 「合意なき離脱」のリスク(PHP新書)
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