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「損しない」ための積立投資

 コロナウイルスで大荒れの相場。下落相場を初めて経験する投資家も多いだろう。「9割の投資家が損をしている」としている記事も散見されるが、一概に誇張とも言えない環境だ。
 
 日本取引所(JPX)の公表しているデータでは、日本の株式市場での取引金額のうち個人投資家は約19%であるのに対し約73%が海外投資家、4%が国内の金融機関だ。運用のプロである機関投資家がこれだけの割合を占めている日本では、個人投資家が安定して勝ち続けることは難しい。損失を抱えている投資家の方が多いだろう。今回は個人投資家が失敗してしまう理由と、損失を防ぐ「積立投資」について説明する。


個人投資家が損をする理由


 まず、下のチャートを見ていただきたい。日経平均とNYダウの20年チャートだ。ITバブルの崩壊、リーマンショック等数多くの下落局面があったにも関わらずNYダウは2倍以上、日経平均でさえ10%プラスになっているのだ。何も工夫せず市場に投資するだけで利益になるのに、なぜ個人投資家は損をしてしまうのだろうか。以下で2点見ていく。


※2000/4/23を100とし、2020/4/12までの週足データから筆者作成

①「高値掴み」してしまう

 多くの方が、銀行や証券会社で、直近成績のよい株式や投資信託を勧められた経験があると思う。「安いときに買って高いときに売る」ことが投資の基本であるが、値上がりしている割高な商品を買い、資産が塩漬けになってしまう。

 例えば、AI株や自動運転関連株等、個別の株式が話題になった後に投資信託が設定された場合、人気は高いがすでに高値の状態から運用スタートという状況になりやすい。テーマ株の成績がすぐれないことが多い所以である。

②「売り時」の難しさ

 含み益を抱えているときに「まだ上がるのではないか」と持ち越して逆にマイナスになってしまった、含み損のときに「もう上がらない」と売ってしまいその後の利益を逃した等、苦い経験をされた方は多いだろう。これは何もあなただけの問題ではなく、アンカリング効果といって普通の人間は陥ってしまう特徴なのである。ダニエル・カーネマンはこうした行動経済学の研究でノーベル経済学賞を受賞している。

投資は「いつ売るか」が一番難しいといっても過言ではない。結果は未来にしかわからないからだ。


実はこの「損をしてしまう理由」2点は、どちらも積立投資で解決できる。


積立投資とは


 積立投資とは、一言でいえば「決まったタイミングで一定金額ずつ投資する」方法である。いわゆる、ドルコスト平均法だ。頻度は自分で決めることができるが、毎月の積立てが一般的である。銀行口座から自動的に引き落とす設定も可能なので、タイミングを考えずに忘れずに投資を続けることができる。忙しい人や、長期での資産形成に向いている投資手法である。2018年に「つみたてNISA」が始まったように、国としても推奨している方法だ。では、なぜ損をする理由を解決できるのか見ていく。

①高値掴み

 積立投資では、高値掴みは起こらない。1つ例を考えてみよう。1か月ごとに5万円投資した株式が、以下のように動いたとする。



 6か月で30万円の投資になる。もし一括で投資していたとしたら単純に20%の損になるが、積立投資していたらなんと49%のプラスになるのだ。下のグラフで、株価に加えて平均取得単価、合計の株数も記載した。同じ30万円でも、一括投資では300株しか買えないのに対し、積立投資では560株も買えるのだ。積立てでは毎月決まった金額を投資するため、「株価が安いときは多く買い、株価が高いときは少なく買う」ことになるのだ。結果として、高いところから始めたようでも平均取得単価(簿価)は安くなる。この例では、536円以上であれば利益が出るようになった。
 自動的に株価が高いときは株数を抑え、株価が安いときは多く買われるのが積立投資だ。一時的に損になっても、積立てを続ければ取得単価が平均化されるため高値掴みは起きなくなる。




②売り時

 もう一つ例を見てほしい。下は、10年間で価値は半分になっている商品のチャートだ。一括投資の場合もちろん資産も半分になってしまうが、もし毎月の積立投資で購入を続けていた場合、結果は逆になる。



 なんと、約16%のプラスになるのだ。「半値になっても儲かる」という投資は積立投資しかないだろう。「値下がりしていても安心」というのは、積立投資最大の特徴だ。値下がりしても利益になるため、日々の価格変動に一喜一憂する必要がない。積立投資では、基本的に売り時は考えなくてよい。
 
 このように、積立投資は「とにかく損をしにくい」投資手法と言えるだろう。それなのに、なぜ投資家の間で広まっていないのか。この理由は単純で、金融機関にとってすぐに儲かるものではないからだ。毎月数万円のお金を長期的に積み上げてもらうのは手間がかかり、営業効率も悪い。それよりも、預金にある資金を一気に投資してもらったほうが手っ取り早く多額の手数料を稼げる。実際に、多くの証券会社ではほとんど営業推進されていないようだ。金融庁「NISA・ジュニア NISA 口座の利用状況調査 (2019 年9月末時点)」によると、成人人口1億500万人のうち、NISA口座数は1,340万。うち約53%を60歳以上が占めており、資産形成が必要な若年層にはほとんど利用されていない状態だ。

 一方、アメリカでは積立投資は非常に広く認知されており、多くの国民が積立投資を実行している。これは、日本ほど公的年金制度が充実していないためである。将来に向けて資産を築いていくために、積立投資は最も効率が良い方法と考えられているのだ。NISAのモデルとなった「ISA(Individual Savings Account)」を推進するイギリスでは、資産形成制度として成人の約半数が利用。残高は、金融資産のうちおよそ10%まで拡大している。(※日本証券業協会「英国における個人の中長期的・自助努力による資産形成のための投資優遇税制等の実態調査」より)


積立投資の弱点


 ここまでメリットばかり説明してきたが、もちろん積立投資にもデメリット、弱点はある。下図のような値動きの商品を考える。毎月1万円、合計120万円積立投資したとすると、評価額はいくらだろうか。



 答えは、およそ125.6万円である。価格が1.5倍になっているのに5万円ほどしか利益にならないのだ。積立期間が終わりに近づくと、保有している株数も多くなるので影響を受けやすくなるのだ。ドルコスト平均法によるメリットは、時間の経過とともに薄くなる。10万円分持っている資産に5万円投資するのと、5000万円分持っている資産に5万円投資するのでは効果が全く違うということだ。がっかりされた方もいらっしゃるだろう。だが、先の章を思い出してほしい。積立投資では、価格が下がっていても利益になることが往々にしてあるのだ。逆に、価格が上がっても損をすることもある。


積立投資に向いている商品は?


 実際に積立投資を始めるには、証券口座を開設することになる。投資対象は株式と投資信託に大別されるが、積立投資は長期行うことのメリットが大きい。長期投資を考える上で、株式のみでの積立てはリスクが高いと言わざるを得ない。誰もが知っている大企業である日本航空(JAL)も、1010年に破綻し上場廃止となった。2012年に再上場を果たしているものの、もし再上場できず、株式が売却できなくなったら株式の価値はゼロだ。企業固有のリスクは排除しきれないため、パッケージ化されて複数銘柄に投資できる投資信託がおすすめだ。
 では、どんな投資信託がよいか?まずは、以下の図をご覧いただきたい。投資開始時と終了時の価格は同じ、変動幅のみ違う2つの投資信託を比較する。一括投資ならどちらもトントンで終了となるが、積立投資ではどちらが優れているだろうか。



 正解は、変動の大きい②の投資信託だ。①の平均取得金額は992円だが、②では927円となっている。変動が大きい方が安い時により多く、高いときにより少なく投資できるため、積立てにおいては有利なのだ。近年、リスクを抑えて分散投資するバランス型の投資信託が人気である。安全に運用するためには良い商品だと思うが、こと積立投資に関してはあまり向いていないと言える。また、当然コストも低いほうがパフォーマンスはよくなる。EVや5Gといったテーマ型の投資信託は、1年あたりの手数料が1-2%程度とかなり高い。そういった意味では、インデックス型の投資信託が良いだろう。下に日本株と世界株、新興国株式の30年チャートを掲載した。もともとのパフォーマンスもさることながら、変動幅でも新興国が圧倒的に日本株を上回っていることがわかる。積立投資の特徴を考えると、変動の大きい「新興国株式インデックス投資信託」が適した商品だと言えるだろう。


※1969-2020 MSCI Index


積立投資の出口戦略


 「積立投資の弱点」の章で「積立期間が終わりに近づくと、保有している株数も多くなるので影響を受けやすくなる」と述べた。積立投資においては、出口戦略が非常に重要だ。ここでは出口戦略について、具体的に例を用いて検証していく。下の図をご覧いただきたい。9年間同じ値動きをした後、10年目で評価額が分かれた3つの投資信託を仮定した。月1万円ずつ10年間積立投資を行った場合、リターンにはどれほどの差がつくだろうか。
答えを申し上げると投信Aは約262万円まで上昇したのに対し、投信Cは134万円ほどにしかならないのだ。最後の価格が上昇するかどうかで、かなり評価が変わってしまうことがわかる。



 積立投資の出口戦略がいかに重要か、わかっていただけたと思う。ただ実際のところ、相場の頂点で投資を終了することはとても難しい。長年積み上げてきた資産を暴落で失わないための戦略として、「リスクコントロール」が重要だ。
 
 例として、20~30代は、資産の成長を重視して積極的にリスクを取り、株式の比率を高くした運用をする。40~50代では資産の保全を視野に入れ、債券などリスクが低めの商品を少しずつ増やしていく。そして、60代の退職に近づくにつれ、低リスク商品の比率を更に高める。自分の人生設計をよく考えて目標を設定し、リスクをマネジメントすることが必要だ。

 とはいえ仕事で忙しい中、自分で投資対象を選びポートフォリオを考えていくのは大変だ。そのため海外では、退職日を設定しリスク管理を自動的に行ってくれるライフサイクル型ファンドが人気である。残高は2018年末時点で約1.1兆ドルと、10年間で4.3倍になっている。( Morningstar Manager Research,‛‛2019 Target-Date Fund Landscape: Simplifying the Complex,’’ May 9, 2019より)日本では、つみたてNISA専用ファンドとしてフィデリティ・ターゲット・デート・ファンドやeMAXIS マイマネージャーシリーズ等がある。手数料は高くなるが、管理まで任せることができる点はおすすめだ。

 例えばアメリカではライフサイクル(ターゲットイヤー、ターゲットデイ)型ファンドは、ペンションプロテクトアクト2006という法律が制定されて以降、確定拠出年金において、何も指定しなかった場合に自動的に選ばれる標準ファンドに多く採用されている。

 ライフサイクルファンドの惜しい点としては、完全オーダーメイドのポートフォリオに比べて、ポートフォリオ変更のタイミングが予め機械的に決まっており、相場の環境を考慮することは無い点が挙げられる。しかし長期的な運用目標を立てて、それに向けて運用するゴールベースアプローチの入門としては採用しやすいファンドといえる。


「損しない」ための積立投資まとめ


 積立投資の特徴は、「値下がりに対してとにかく強い」という点だ。値下がりに対する「保険料」を払っているイメージが近いかもしれない。値上がりに対しては多少弱くなるが、「下がっても安心」という安心感を得ることのメリットはもの凄く大きい。コロナウイルスにより、安く仕込むチャンスが巡ってきた。積立投資を始めるには、これ以上ないタイミングだろう。
 日本でもつみたてNISAやiDeCo等、「老後2000万円問題」の解決のため国が色々と政策を打ってきている。iDeCoは既に800万人が口座を開設しているようだ。徐々に知名度を上げているが、まだまだマイナーな積立投資。自分の年齢と余裕資金を考慮し、始めてみてはいかがだろうか。

※上記は参考情報であり、将来の投資成果を保証するものではありません。

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