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富裕層があえて贈与税を払う理由

 平成25年度の相続税制改正により、相続税の基礎控除額が大きく減少した。それまでの「5000万円+1000万円×法定相続人数」から、「3000万円+600万円×法定相続人数」になった。率にして40%減である。「大相続時代」とも呼ばれる超高齢化社会の中で、新しく相続税の課税対象になった方も多い。相続税の節税方法は様々あるが、年間110万円までは非課税で贈与できる生前贈与により課税財産を減らすことができるということはほとんどの方がご存じだろう。贈与税は税率が高いから110万円ずつ贈与しているという話をよく耳にする。

 だが、それだけでは税金対策としては不十分だ。思うように財産を減らすことができず、結果的に多額の相続税がかかってしまう例も多い。今回は、具体的な例を使って「贈与での節税」を最大化する方法を見ていく。


相続税の現状


 まず、相続税の状況を簡単に見ていく。平成20年~29年の相続税の概況を下に載せた。27年に相続税制改正が適用され、課税対象がそれまでの4%台の倍程度に増えていることがわかる。また、被相続人数・税額ともに上昇傾向にある。


※国税庁より作成

 また、今の日本で一番資産を保有しているのは高齢者だ。総務省によると、2018年には貯蓄の70%近くを60歳以上の家計が占めていたようだ。平均貯蓄額もグラフの通り高齢になるほど多くなっており、今後しばらく相続税収は安定して動いていくだろう。


※総務省「家計調査報告(2018)」より


贈与と相続の税額


 贈与税と相続税額は以下の表のとおりだ。贈与税のほうが税率は高く見えるが、相続税は1回で課税されるのに対し、贈与税は複数にわけて財産を渡すことができるという違いがある。2つをわけて考えるのではなく、「どうすればトータルの税金が安くなるか」という視点で考えることが大切だ。





贈与税を払うことで税金が安くなる


 全体の税金を安くするという観点から、1つ例を見てみよう。(諸々控除後の)相続税の課税対象額が5000万円で、5年間贈与を行うとする。

①何も対策しなかった場合

贈与税0円
相続税 5000万円×20%-200万円=800万円 の税金がかかる。

②基礎控除内の110万円ずつ贈与した場合

贈与税0円
相続税=4450万円×20%-200万円=690万円 

③5年間毎年400万円ずつ贈与した場合

1年あたりの贈与税は
基礎控除後の課税価格 400万円-110万円=290万円
贈与税額は 290万円×30%-30万円=33.5万円 
になるため、5年間の贈与税総額は167.5万円だ。
相続税は
3000万円×15%-50万円=400万円
となり、贈与税+相続税=567.5万円となる。

 この例では、年間110万円ずつ贈与するより、贈与税を払ってでも多く贈与したほうが全体の税金は安くなった。もちろん家族構成や贈与の年数で結果は大きく異なるが、富裕層はこうした視点を持ち、自分の資産を守る方法を考えているのだ。


贈与を行う上での注意点


 毎年贈与を行い節税しようとしても、いざ相続が発生した際に贈与した分も相続税に含まれてしまうケースがある。せっかく贈与を行うならば、こういったことは絶対に回避したい。よくある事例と対策を紹介する。

①名義預金

 通帳を親が管理し贈与した事実を伝えないなどのケース。名義は子供や孫であっても実質的には親が管理する「親の預金」であるため、相続財産に含まれ課税対象になってしまう。 

②定期贈与

 例えば毎年110万円ずつ10年贈与していた場合、「毎年110万円ずつ贈与することが決まっていた」定期贈与とみなされて、合計の1100万円に対して改めて贈与税がかかるケースがある。

 上の2つを防ぐための方法としては、贈与のたびに贈与契約書を作成することが有効だ。贈与を受ける側がその事実をきちんと認識し、証拠を残しておけば名義預金とみなされることは防げる。定期贈与の回避のために、金額を少し変えるというのも有効なようだ。

③生前贈与加算

 贈与をしてから3年以内に相続が発生したケース。この場合も贈与額が相続財産に巻き戻される。

 3の対策としては、「孫に贈与する」方法がある。生前贈与加算は、相続人でない者への贈与は適用外なのだ。法定相続人ではない孫に贈与することで、相続開始直前まで税金対策がとれる。


おわりに


 今回は「贈与税を払うことで全体の税金を安くする」考え方について解説した。贈与税を払ってでも多くの財産を生前贈与した方が、最終的には得をすることもあるのだ。家族構成や年齢を考えて、税金対策を考える必要があるだろう。
 なお、贈与は認知症になってしまったらできなくなる。こちらの記事で、認知症になっても有効な相続税対策(家族信託)についても紹介しているため、是非ご一読いただきたい。


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