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米国IT株が高騰している理由:「質への逃避」経済用語解説シリーズ①

 このシリーズでは、相場で旬のテーマを用語解説という形で簡単に解説していく。第1回は「質への逃避」についてだ。

 GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)をはじめとする米国IT株の勢いが止まらない。割高と言われ続けて何年にもなるが、コロナショックでも需要が増える環境により値上がりを続けている。時価総額は5社の合計で一時560兆円を超え、東証一部の上場企業約2,160社の時価総額を上回ったと話題になった。

 昨年12月時点を100として、ASEAN株式インデックスとS&P500指数、マイクロソフトの株価推移を比較した。


※MSCI、Investing.comから作成

 新興国が約20%マイナスになっているのに対して米国S&P500指数は4%減にとどまり、マイクロソフトに至っては23%プラスになっている。コロナウイルスの影響は世界全体に及び、感染者数で比較したら米国が圧倒的に多いのにも関わらずこれだけの差がついている。その理由は「質への逃避」が起こっているからだ。


質への逃避とは


 国際金融市場で生じた不安感の高まりで、投資家がより安全な国へ資金を移そうとする動きを質への逃避という。特に理由がなくても発展途上国から資金が流出し、先進国に資金が向かうことになる。合理的な理由がなくても、身の危険を感じて安全地帯に戻ろうとするイメージだ。様子を伺い、安全が確認できてから徐々にリスク許容度を高めていく流れになる。

 実際に、今も新興国のリスクが格段に高いわけではない。各国・地域のGDP成長率は、国際通貨基金(IMF)が以下のように試算している。経済活動の停止により、GDP減少率はむしろ先進国の方が高いにも関わらず、質への逃避により米国の一部の株式に資金が集まっているのが現状だ。


※IMF「世界経済見通し」2020年4月 より作成

 過去の暴落時の値動きを見てみよう。リーマンショック時には、新興国→先進国だけでなく株→債券という質への逃避も起こった。赤枠で囲んだ部分がリーマンショックの部分だが、米国もASEANも同様に株価が下落している。一方で、10年米国債利回りも低下しているため、安全資産として米国債が買われていたことがわかる。


※筆者作成

 景気への先行き不安や投資家のリスク許容度の低下により、安全資産に資金が向かった。その後は、2009年に入ると国債利回りも上昇に転じ、株式に資金が戻っていった。中国を中心に大規模な経済対策を打ち出したASEANがいち早く回復した。


まとめ


 特に新興国個別のリスクが高まっていなくても、相場への不安感から安全な国や資産に資金がシフトするのが「質への逃避」だ。相場や経済状況によって資金の逃避先は異なるが、理由もなく資金が引き上げられる国が多いのが特徴だ。リスクをしっかり見極める必要はあるが、理不尽に価格が安くなっている資産を見極めて投資することでリターンが狙えるのではないだろうか。

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