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消費税論議と統帥権干犯問題

砂布巾
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砂布巾と申します。自己紹介は追々の記事でお話しさせていただきます。アウトロー気質の目線から、政治・経済・思想・心理等の学問分野のあれこれを平易かつ単純にお伝え出来たらと考えております。お気軽にご覧いただき、皆様の好奇心が広がって行くきっかけにご利用いただければ何よりと考えております。

いささか突飛なタイトルに見えるかもしれません(笑)。

 ご承知のように参議院選挙は民主党の「オウンゴール」とも呼ばれる敗戦で幕を閉じ、衆議院で三分の二の勢力を持たない与党は連立再編をしない限り厳しい議会運営を強いられる「ねじれ国会」となってしまいました。

 この結果の分析やこの結果に至った経緯や裏に潜む問題点等、政治学を講じる私としては申し上げたいことは沢山あるのですが、今回は民主党幹部である仙石由人官房長官の発言から垣間見えるちょっとしたヒントについて言及させていただきたいと考えております。

 鳩山内閣を引き継いだ菅直人内閣は、就任直後非常に高い内閣支持率を世論から得たものの、菅氏が消費税議論を開始し、自民党が掲げる10%が目安になる等の発言をしたことから選挙前にもかかわらず支持率が急落しました。

 それを受けて、選挙前の7月5日の記者会見にて内閣官房長官(内閣官房を所管し、政権のスポークスマンも務める大臣)である仙石由人氏が「政友会は統帥権干犯(とうすいけんかんぱん)を持ち出し、メディアも大衆的な追い込みをかけた。ある種のアンタッチャブルな領域を作る議論はとても危ない。」という発言をしたと報道されました。

 仙石氏は、東京大学の学生時代に全共闘の主力メンバーとして活動しながらも在学中に司法試験に合格した優秀な能力を持ち、所謂「人権派弁護士」として活動されました。その後旧社会党から衆議院議員として当選し、社会党が社民党になる際に離党して、現在に至ります。現在ではむしろ規制緩和等で小さな政府を目指す「新自由主義者」とも評されています。

 いずれにしても、策士・業師としての呼び声が党内外で高く、その能弁・雄弁ぶりも夙に有名です。

 その仙石氏が、消費税議論が参議院選挙の争点となり、菅内閣の支持率が低下する中で「統帥権干犯問題」を引き合いに出したことは、消費税議論をタブーのような取り扱いを皆がすることが、戦前に政治的タブーとなった統帥権干犯問題と同じように、政治が大衆迎合で機能しなる戦前の軍国主義の暴走と同じ状態を引き出しかねないという「暗喩」であったものと思われます。

流石は英才である仙石氏らしい教養あるお言葉ではあります。

さて、それでは統帥権干犯問題がどのようにして政治的タブーとなり、軍国主義の暴走と政治の不機能化をもたらしたのでしょうか。

 昭和5年、世界的な軍備縮小(当時は海軍力)を目指して英米日仏伊によるロンドン海軍軍縮会議が開催されました。日本側全権は若槻元首相と財部海軍大臣でした。

 財政緊縮と国際協調の観点から時の民政党浜口雄幸内閣は、これを機に軍縮を狙いましたが、海軍軍令部から強い反対を受け事態は混迷しました。しかし最終的には条約に調印しました。

 それに対し議会では、野党である政友会が、浜口内閣の条約調印に対して、時の憲法第11条の「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」、第12条の「天皇ハ陸海軍ノ編成オヨビ常備兵額ヲ定ム」という条文を楯に、海軍軍令部を通じた天皇の統帥権を干犯していると大問題にしました。

 それに対し浜口首相は議会で、「一応天皇が最終的な権限を持っているが、実際上は責任内閣制度なのだから内閣が軍縮条約を結んでもかまわない。これが統帥権干犯ならば、外交を外務大臣がやるのは外交権干犯なのか?」と筋の通った発言をして政友会を退け条約を通したのですが、加藤軍令部長が統帥権干犯を理由に辞職する等の動きを見せ、それが原因か後日右翼の暴漢に東京駅で襲撃され重傷を負い、政友会が病床の浜口首相を国会に無理矢理引っ張り出したことから病状が悪化して浜口氏は亡くなりました。

 浜口氏は暴漢に刺された際も「男子の本懐だ」と叫んだと言われ、気骨ある人物であったとされています。尚、現在では正しくは軍艦の整備は軍令部ではなく内閣の一員である海軍省の管轄で、海軍省が決定し条約を天皇が承認すれば手続き上の問題も無かったと言われています。

 しかし、その後この統帥権干犯という問題は、政治的タブーのようなものになり、軍部は様々な手口で時の内閣に天皇の憲法上の権限を楯にプレッシャーをかけ大衆やマスコミも支持したことから議会政治の機能が低下し、ご存知のような結末となってしまった訳です。

その意味では、仙石氏が仰有るように、消費税増税も政治的イシュー(争点)としてタブー視されるべきではありませんし、是非を安易に考えるべきではありません。

ではありますが、私はここで2つのことを申し上げさせていただきたいと思います。


 ひとつは、仙石氏はわざわざ戦前の軍国主義的出来事を喩え話として出したのですが、戦後政治を俯瞰すれば、むしろ仙石氏が永年馴染んで来られたリベラル側が戦争の悲劇を楯にタブーを作り出して来ているのが客観的な評価と言われていることです。

 以前書かせていただいたかもしれませんが、鳩山前首相は改憲を自らのホームページで訴えておられますが、それも護憲の名の下に憲法論議をタブー視して論議すら許さないという一部政党の流れの文脈の中にあるものです。

仙石氏の教養や知識は素晴らしいのですが、事例としては些か突飛に感じて、何らかの意図すら感じるのは私だけでしょうか。

 今ひとつは、実は浜口内閣に対して統帥権干犯問題を持ち出し、海軍軍令部と結んで攻撃をした政友会の中心人物こそが、鳩山前首相の祖父である「鳩山一郎元首相」なのです。

 鳩山氏は後に首相となり五・一五事件で暗殺される犬養毅氏と共に、軍令部次長の末次中将と結んでこの統帥権干犯問題を政党同士の勢力争い、つまり党利党略の道具として使ってしまった張本人なのです。鳩山氏は戦後この統帥権干犯問題での行動を問われ一時公職追放となりました。

 勿論、私は鳩山一郎氏の政治的功績をこの一部の出来事だけで断罪するつもりはありません。しかし、仙石氏は、自らを大臣に引き上げてくれた前首相の鳩山由紀夫氏の祖父がその仕掛け人であったことをご存知であったのでしょうか。。。。

ご存知であらば、鳩山氏の神経を逆撫でる発言ですし、知らなかったとすれば、かなり恥ずかしいことであると私は考えます。

 いずれにいたしましても、自民党の長期政権を倒して新しい政治への期待が膨らむ民主党ではありますが、どうも表面的な発言や行動があるように感じられてなりません。その功績も大きく、国民の期待も大きいことから是非ともテクニックに走らず、本質的な活動をしていただきたいと私は感じています。

 また機会あらば、消費税論議も含めた政治的イシューについて投稿させていただく所存です。中々ルーズな執筆者ではありますが、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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