年率10%、ピクテのヘッジファンド投資
ヘッジファンド業界の主要プレイヤー

実際に、ピクテが運用商品として推奨しているヘッジファンドは、ピクテが数多くのヘッジファンドの中から厳しい審査を繰り返して、優れた運用成績を残してきた長期運用を原則とする運用スタイルのヘッジファンドばかりだ。
ピクテは、ヘッジファンドへの投資に関してすでに15年以上の歴史を持ち、中でもファンド・オブ・ヘッジファンズ(以下FOHF)に関しては、13年以上のトラックレコード(投資経験)を持っている。ヘッジファンドへの投資残高は、2007年10月末現在で累計270億米ドル(3兆円1000億円、1米ドル=115円で換算、以下同)、そのうちの90億ドル(約1兆円)は一任勘定運用、FOHFによる投資も55億ドル、6325億円に達する。
FOHFといえば、つい最近の金融商品のように思われがちだ。とりわけ、日本にこの種の商品が入ってきたのは、極めて最近のことだ。しかし、ビクテではすでに1980年代の終わりにはヘッジファンドの推奨を行っており、1994年には「Mosaic 1」というFOHFを立ち上げている。さらに、98年にもその第2弾となる「Mosaic 2」を立ち上げている。それだけ、ヘッジファンドの世界では長い
歴史を持ち、主要な投資家の1社として認識されているのだ。
優れたファンドマネージャーを選出する体制

たとえば、ファンドマネージャーの選別基準では、少なくとも四半期に一度は運用責任者との間でミーティングが行われている。具体的には、ファンドマネージャーの経験や履歴、経営の安定性を見る「人物と組織」のチェック、そしてリスクの度合いや投資手法、流動性、レバレッジと言った「投資プロセス」、内部統制や責任の明確化といった「投資決定方法」、運用手法や制限といった「リスクマネジメント」の部分で選別基準を設けている。
さらに、こうした定性分析だけでなく定量分析の面でも、ファンドマネージャーのチェックが行われる。たとえば、月次、年次、下落時、回復期間といった「運用成績」のチェック、標準偏差、シャープレシオ、ソルティノレシオといった「リスク/ボラティリティ」のチェックも基準となる。
厳密なファンドマネージャーのリスク管理

・投資戦略変更
・リスクマネジメントの実施
・透明性の度合い
・投資スタイルの変化
・組織変更のチェック(退職など)
・同業他社分析
・運用資産額の変動(解約などの状況)
・取引相手のリスク
・解約及びその費用
リスク管理では、さらに「アロケーション」や「ポートフォリオの構築」と言った面についても厳しいチェックが行われている。アロケーションでは、戦略の分散化やリスク負担の度合い、投資原則の適合性、相関関係と変動幅のモニター、マクロ経済への対応、ピクテ銀行投資委員会との連携などがチェックされる。

たとえば、リスク分析ではVAR(バリュー・アット・リスク)、最大下落率、半偏差、ソルティノレシオといったリスクが分析される。ちなみに、VARとは保有している資産がどの程度、損失する可能性があるのか。過去の価格推移などをもとに統計的に算出する指標のことだ。ソルティノレシオも、ヘッジファンドをチェックする際にみるもので、簡単に言えば下振れリスクがどの程度あるのかを客観的に見るデータである。
Pleiadのアロケーションにみる運用スタイルの違い
さて、そんなピクテが日本に導入したFOHFは「F3」と「Pleiad(プレイヤード)」の2種類だ。特に、Pleiadは最低50百万円程度から投資できる商品で、飛びぬけた資産家でなくても、利用できる商品と言える。ところで、このPleiadのポートフォリオの内容を示した下の円グラフを見ていただきたい。様々な運用スタイルのヘッジファンドが組み込まれていることが分かるはずだ。最も一般的な「ロングショート(Long/Short)」をはじめとして、「イベントドリブン(Event Driven)」「グローバルマクロ(Global Macro)」「マルチストラテジー(Multi-Strategy)」などがある。さらに、元本確保のFixed Incomeや破綻(ディストレスト)証券、Convertible Bond Arbitrage(債券を使った裁定取引)といったヘッジファンドがよく使う金融商品も入っている。これらの運用戦略を簡単に紹介すると――

●ロングショート(Long/Short)……将来値上がりが予想される株式などを「買う」取引が「ロング」、逆に将来的に値下がりが予想される銘柄を「売り」の状態で待つのが「ショート」。ロングポジションとショートポジションを、そのときの状況に合わせて保有し、取引するのがロングショート戦略だ。ヘッジファンドのもっとも一般的な運用戦略といえる。
●イベントドリブン(Event Driven)……合併や企業買収などM&A絡みのイベントを狙って投資する戦略。組織再編、事業再編成、清算、破綻などもターゲットとなり、これらイベントによる価格変動を利用して収益機会を生かす運用法。場合によって事業再編成の動きを5~7年間もじっと待つこともある。
●グローバルマクロ(Global Macro)……各国の株式市場をはじめとして債券、為替、商品、デリバティブなどのマーケットで、市場価格の歪みを見つけて投資する方法。かつてはヘッジファンドの代表的な運用戦略で、ジョージ・ソロスのクォンタム・ファンドなどが英国ポンドやタイバーツといった為替をターゲットにしたことで知られる。
●マルチストラテジー(Multi-Strategy)……ヘッジファンド一口に言っても、そのストラテジー(戦略)によっていくつかに大別される。単一の戦略を駆使するのが「シングルヘッジファンド」、そして複数の戦略をそのときの状況に応じて使うのが、このマルチストラテジーだ。
ちなみに、ピクテのFOHFでも「F3」はロング/ショートとマルチストラテジーの2つのタイプのヘッジファンドによってポートフォリオが組まれている。リスク分類が「F3」がモデレート(中庸)なのに対して、「Pleiad」はコンサバティブ(保守的)であるため、それだけポートフォリオの中でも分散投資が行われており、その分だけ様々なヘッジファンドを使うことになると考えていいだろう。
最低5年の一貫した運用方針、年率10%を目指す

①外貨のスペシャリストであること
②テーラーメイドな資産運用
③継続性のある金融商品
④長期分散投資
ピクテによるプライベートバンキングの日本進出は2001年だが、2006年までの約5年間はREITなどの不動産を中心に推奨してきた。しかし、 2006年以降はそうした動きを「外貨」と「ヘッジファンド」に方向転換した。この方針は、今後少なくとも5年間以上継続される。つまり、ピクテの資産運用のアドバイザリーサービスは、その時代に合わせて変化していくということだ。

運用の目標リターンは年率10%。実際に、実績面でも10%に達している。07年も10%を達成できるだろうとピクテでは予測している。ちなみに「Pleiad」は、07年8-9月の実績で11.8%に達している。世界的に、株価が暴落していた8月でもこれだけの実績を残している。ピクテの資産運用能力の高さを象徴しているといっていいだろう。
――以下、次回へ続く――

1957年東京生まれ。曽祖父が三井銀行創世期のメンバーの一人というバンカー一家に生まれ、自身も4代目という家庭で育つ。1981年東京国際大学商学部卒業後、日本興業銀行入行。本店債券部、横浜支店、本店勤務を経て、1996年東京支店課長となる。1998年高松支店金融法人課長、本店人事部副参事役を経て2000年3月に日本興業銀行を退職。同年4月ピクテ投信投資顧問株式会社に個人金融資産部長として入社。2000年12月ピクテ・ファイナンシャル・マネジメント・コンサルタント株式会社を設立し、取締役個人金融資産部長に就任。2007年3月同社常務取締役。日本人ではじめてピクテのプライベートバンカーとなり、本場スイスのPB業務を日本の富裕層に展開。

1967年横浜生まれ。1991年慶應義塾大学法学部卒業後、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入社。証券企画部、ニューヨーク現地法人勤務を経て、 1999年12月に同社を退職。その後、シティバンク、メリルリンチ日本証券にてプライベートバンキング業務に従事。2006年3月に中央大学MBA取得。2007年6月ピクテに入社、個人金融資産部副部長に就任。
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