一進一退の円相場、次の波は円高か円安か?
円高トレンドは2010年5月から始まり、いったんは11月初めに転換したかと思いきや、その後の円安への修正は鈍い。2010年末は1ドル=81円で越年し、円高懸念がしつこく残っている状態だ。米国経済の悲観論がやや後退し、米長期金利が上昇する中でも円安方向への修正が進まないのはなぜなのか?
第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、「仮説として、米金利上昇の中に、前向きに評価できないリスク・プレミアムが加味されていることが挙げられる」と指摘する。米国が景気対策を打っても、それが潜在的な財政悪化を招くという不安心理に基づく、いわゆる「悪い金利上昇」が含まれているという見方だ。
これがドル安要因とされるのは、「FRBが低金利政策を継続していくと、副作用としてFRBが容認できないインフレリスクが発生する。あるいは、現在の中長期金利の上昇が、米景気の抑制要因になるという2つの理由が考えられる」(熊野氏)。早すぎる中長期金利の上昇が、むしろドル買い圧力を弱めているという解釈だ。
また、欧州ではアイルランドの財政問題が、南欧諸国へ飛び火。ユーロが下落して、安全資産と目されるスイスフランやカナダドル、そして円へと資金が逃避している側面がある。
「米長期金利の上昇」と「ユーロ安ドル高」は、市場の解釈次第で円相場にとっては「もろ刃の剣」。一方で、円に積極的な買い材料があるわけではなく、当局の介入への警戒感も根強い。まだしばらくは「米景気の動向」と「欧州の財政問題」からは目が離せない。
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