個人投資家の秘密兵器・新型証券「ETN」
どんな指数にでも連動できる縦横無尽な商品

ちなみにETFのFはファンドのF、そしてETNのNはノートのN。すなわち後者は債券であり、対象商品に連動したパフォーマンスが保証されるリンク債だ。現物資産の裏付けがないということは、ETNは一歩間違えばただの紙切れにすぎない。それはつまり発行体との「約束事」であり、約束を担保するのは発行体の「信用力」でしかない。
しかし裏返せば、それだけ画期的な商品だということができる。東京証券取引所・上場部の内藤友則調査役は「実物は売買できなくても、客観的な指標さえあれば、それに連動するETNを発行でき、投資家はその指数のパフォーマンスを享受できる。実際に実物を運用することを求めているわけではないので、逆にいえばどんなものにでも連動できる」と語る。
たとえば外国株なら、外国人には投資制限のある「インド株」や「中国A株」。これらは、発行体がヘッジのためのスワップ取引や先物、デリバティブを組み合わせることで、実物に連動した運用が可能となる。このリスクを取るのは、あくまでの発行体である金融機関。投資家は基本的にただ指数の変動だけを気にしていればよい。
他には、これまで投資家には取引が難しかった「ボラティリティ指数」「ヘッジファンド指数」、貴金属なら「レアメタル」、通貨なら「人民元」「ブラジルレアル」などの取引も可能。「原則どんなものに連動することも可能だが、最低限の基準として指数に『客観性』『公正性』があり、『公表されている』ことが必要」(内藤氏)とのこと。
また、「すでに20社近くの国内外の金融機関から上場打診があり、予想外の反響に驚いている。『個人投資家に訴求力のある商品だ』との声が多く、ユニークな商品がいろいろ出てきそう」(内藤氏)とのことだ。もちろんいままでは扱えなかった商品や指数だけではなく、株なら「日経平均指数」や商品なら「原油」や「金」「小麦」に連動する商品など、従来からあった商品も、より安いコストで取引できるようになることが期待できる。