近年ネットオークションなども発達したことからアート投資は注目度が高まってきています。アートバーゼルとUBSグローバル・アート・マーケット・レポート2021によると、コロナショックのためか2020年は前年比20%ほどダウンしたものの、それまでは10年ほど高水準で売買されていたことがわかります。
アート投資(美術品投資)市場はどこが大きい?
近年中国を中心に美術品市場が活況となっていますが、やはり売買の中心はアメリカです。その割合は42%にも及びます。急激に伸びてきた中国はイギリスとともに20%の割合となっており、この3か国で82%を占めます。次いでフランスが6%と健闘していますが、そのほかの影響は小さいといえそうです。日本もまたこれからというところでしょう。
近年美術品の価格が全体的に上昇したのは新しく中国の20%分の市場が拡大したというのが正しそうです。今後インドなどの所得水準が高まれば、さらに20%の市場が加わる可能性もあり、長期的には市場が拡大傾向にあるというのは、決して言い過ぎではないと思われます。
アート投資(美術品投資)の利回りは?
美術品への投資は近年はアジアを中心にブームとなっていましたが、もともとはヨーロッパを中心に、比較的値動きの少なく、インフレに勝ちうる、保守的な投資対象として人気がありました。
小さな国が多いヨーロッパにおいては戦争が絶えず、不動産よりも動産である貴金属や美術品のほうが好まれる傾向がありました。そういった観点からどちらかというと、資産を増やすための投資よりは、資産を守るための投資としての価値が高かったことが歴史的にわかります。
もちろん美術品にはキャピタルゲインの機会もありますが、個別性が高く価値もその時々に応じて平均が変わることやオークション会社の手数料が10%~25%ほどと高いことなどから、基本的には短期的な運用には向いていない投資対象といえそうです。
ただし長期的な資産としてはインフレにも対応し、徐々に作品も少なくなっていくことから評価の高い作者のものであれば、価値が急落するということも考えにくいと思われます。
アート投資(美術品投資)の税金
美術品の売買は個人の場合は基本的に総合課税による譲渡所得として所得税が発生します。
総合課税による譲渡所得は、その他の給料などと合算して計算となる累進課税のため、比較的税金が大きくなることが想定されます。
総合課税の譲渡所得は短期譲渡(5年以下)と長期譲渡(5年超)に区分され、長期譲渡は費用を除いた利益の1/2が課税対象となります。そのため購入日と売却日を証明できる書類などはきちんと保管しておく必要があります。
また不動産と異なり所有期間の5年でいいことは要注意です。
オークション手数料は費用に入る?
一般的に10%~25%にも及びオークション手数料は費用として認められるのでしょうか?一般的には取得費に加算することができると考えられます。
美術品の賃貸は?
個人が無償で美術館に貸し出した場合は特に所得税は発生しません。一方有償で貸し出した場合は、業としてなしている場合を除いて雑所得となります。貸し出すことが頻繁である場合は事業所得とみなされることもあります。
アート投資(美術品投資)の注意点
近年美術品の投資がブームになっていることもあり、注目している人も多いと思います。しかし一般的には難しい投資対象です。例えば時計やクラシックカーは一点ものではなく複数同じものが市場・相対取引で出回ることで適切な価格の算定が行われますが、美術品は基本的に1点もので個別性が高く、また相対取引中心のため価格動向も流動的です。
また保管の難しさも考慮に入れる必要があります。
美術商・百貨店で美術品を購入する場合
良いものを安値で買うためには基本的に「情報格差」が必要で、売る人よりも買う人のほうが情報を多く持っている必要があります。基本的に日本で美術品を手に入れる場合「専門家」からの購入が多くなり、安くで買えることはありません。そのため美術品関係の人がリセールバリューが重要です、などと言って勧めた場合でも、売却側が十分利益が出るレベルでの価格で購入することになります。基本的に安く買えることはないですが、基本的な価値はお墨付きがあります。次世代につなぐ資産としては良いものを適切な値段で買う必要があると思います。
オークションで美術品を購入する場合
オークションは良いものが安くで手に入る可能性があるなどと言われますが、一般的にオークション会場は熱気に包まれていることから、実際に参加すると想定よりも高い値段で落札することも少なくありません。そういった環境下で買うことが多いため「安くで購入したい」という意気込みとは逆に「高値でつかまされる」ことが多いのが実態です。
感情のコントロールと参加機会を増やせるかどうかがオークションの勝者になるために重要となります。
相対取引で美術品を購入する場合
素人同士の相対での取引の場合、贋作をつかまされることもあり、高額なものほどより難しくなります。場合によっては情報格差から非常に安くで購入できる可能性もありますが、反対に大損する可能性もあり、よりハイリスクハイリターンといえそうです。
時代・背景等投資対象の価値がわかる人のみが、美術品の本当の価値を理解できるのかもしれません。