毎日が美女と酒だったIPOバブルのアノ頃2

3億円は借金のうちに入らない?

 「たったの3億円じゃないの」

 首が回らなくなった水野氏が頼ったコンサルタント。いとも簡単にそう言われてしまったという。借金のレベルは10億円、100億円クラスがゴロにいるそうで、3億円など取るに足らない金額だったからだ。

 「早く両手を挙げていればよかったのですが、事業自体を諦めきれなかったのでしょう。起業は99%が失敗するとも言います。最悪、受け身をとる学習をしておかないと深い痛手を負うことになります」

 しかし、水野氏は清算中でも、実はまだ諦めはついていなかった。何とか新たに資金を受けてその利益で返済を、という考えも浮かんでは消えていた。水野氏はこれまで銀行の融資担当者からことごとく融資を引き出してきた。

 なぜ成功したか、それを自己分析すると次の3点になるという。

1スーツ力
2ストーリーテリング
3数字の裏付け

 1は勝負スーツで第一印象を良くして、2では事業の成長ストーリーを詳細に説明することで、融資担当者も一貫して評価をしたがるようにする。そして3は、年間の利益と同額の借り入れを要求するなど数字的な裏付けを大事にする。

 これで、融資を引き出せたことは水野氏の才能だろう。しかし、それと同時に傷を深くしていった。コンサルタント氏に軽いと言われた3億円だが、水野氏にはとてつもなく重たく感じる。

 コンサルタント氏の助けを借り、金融機関に支払い条件の交渉を行い成功する。清算する中で、「お金」について「人生」について、あらためて考えさせられた。

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