厚生年金基金から委託された1500億円近くの年金資産の大半を一人で運用していたとみられる浅川社長。だが関係者によると、私生活に派手さはなく、東京・銀座の飲食店に自ら酒を持ち込むなど、〝倹約家〟の一面もあったという。周囲の人間が、この浅川社長の紳士的な容姿と落ち着いた物腰に一杯喰わされたことは想像に難くない。
尤もこの事件、もちろん同社が顧客に虚偽の運用実績を説明したことは問題だが、一概に運用側だけに問題があったとは言えない。
識者の間では、「AIJに投資した年金基金は『被害者』として同情されているようだが、『無知は善なり』では高齢化社会を乗り切れない。常識外れの予定運用利回りも問題だが、『プルーデント・エキスパート』(思慮深い専門家)としての年金基金の受託者責任を明確にすることも必要だ」という意見も強い。
仮にもプロを名乗るのなら、自己責任は免れない。資産の管理を担当する信託銀行、運用の委託者である年金基金、母体企業の財務担当者、そして、運用機関を選択する際にアドバイスする年金コンサルタントなど,すべての関係者が本来の責務を果たしていたのか、という点がもっと検討されてしかるべきだろう。