津賀専務「わたしが入社した時の社長」
そして平成9年、相談役だった山下氏が、パーティー会場で話した言葉が、創業家と経営を完全分離する決め手となった。幸之助の孫で、正治氏の長男である正幸氏が副社長になっていることについて山下氏は「創業者の孫というだけで副社長になっているのはおかしい」と批判したのだ。
幸之助が選んだ山下氏が松下家からの経営分離を進めたことは、なんとも皮肉だが、立礼に立っていた松下正幸副会長を見て、ある住友系の企業OBはこう話した。
「創業家色はいよいよ薄くなったが、そうはいっても、関西の経済界はパナソニックに対して、松下幸之助の面影を求めている」
パナは、2012年3月期の連結決算で、7800億円もの最終赤字見込みで、6月には55歳の津賀一宏専務が社長に昇格する。津賀専務もお別れの会に姿を見せ、「わたしが入社したとき、山下社長でした」としみじみコメントし、時代の流れを感じさせていた。