JPモルガンの損失で問われるもの

 JPモルガンが巨額の損失を出すに至った背景には、第一に規模の問題がある。2008年のベア・スターンズとワシントン・ミュチュアル等の買収に伴い、同行のチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)のポートフォリオは2007年の765億ドルから2011年には3,560億ドルに跳ね上がった、とNYタイムズが報じている。CIOのリスク・エクスポージャーも上昇した。

 各部門にわたる全体のリスクは非常に大きいため、それらを相殺するには巨額のヘッジが必要となる。しかし、ロイターによると、実際には潤沢な流動性や高いヘッジ能力を提供できる市場や金融機関は少ない。

 次に、リスクをヘッジする部門で損失が発生したこと。CIOの目的は資産と負債のミスマッチの金利リスクをヘッジすることである。過去三年間でCIOは同行の利益の10%を稼ぎ出す収益センターとなっていて、2009年には同部門の純利益は前年の15億ドルから37億ドルに急増した。

 3番目に、リスク計測モデルの問題。ロイターによると、米証券取引委員会(SEC)による調査はリスク計測モデルに重点が置かれる。JPモルガンは2012年1~3月期の一日のVaRを6700万ドルとしていたが、これをほぼ倍の1.29億ドルに修正して銀行がより大きなリスクをとれるようにした。ジェイミー・ダイモンCEOはリスク計測モデルの変更が不適切であったと述べている。

 4番目にリスク管理の問題。JPモルガンがCDS指数の巨額の売りポジションに対して、十分なリスクヘッジを採っていないとみた複数のヘッジファンドが買いを入れて相場の下落を阻止し、CDS指数の引き上げに動いたことが、JPモルガンの巨額の損失を招いたといわれている。

 問題はマーケットに比してポジションを取りすぎたことであろうが、トレーダーの個人の判断で行われたのか、幹部の合意を得て行われていたのかが問われそうだ。

 最後に、銀行規制の強化に向けた動き、ボルカー・ルールの施行に影響を及ぼす可能性が懸念される。

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