「ワイン専用」の旧国鉄トンネル
赤は在来品種ブラック・クイーンとマスカット・ベリーAというぶどうをブレンドして醸造したものだという。この赤の濃厚で透明な色は、グラスに注がれ光が差すと誇らしいばかりに輝いている。開栓して時間が経つほどに味が変化していく。
私はワインに詳しいわけではないが、お酒が好きなだけにワインも量と種類はたくさん飲んできている。その舌が言う。「これほど美味しいワインが日本にあったのか」と。私の常識では、美味しいワインはフランスやイタリア、ドイツ産に決まっており、米国でも「オーパス・ワン」がある程度だと思っていたのである。その常識が覆された。驚くのは早かった。
次に、今村の自宅へ行き、地下のワインカーブを見学した。旧醸造場を利用して造られた地下カーブには、ワインの回りにクモの巣があちこちに張っており、壜はほこりにまみれている。暗くて静かでワインを熟成させるのに最適な地下カーブには5万本が貯蔵されているというが、いかにも年代を感じさせる風情だ。