日本にこんなワインがあったのか~鳥居平(とりいびら)物語~

ヴィンテージ「鳥居平」

 よくみると、坂本九、丹下キヨ子、菅原洋一たち有名人の名前の札が掛かっている。数十年前にまとめて買ったワインをこのワインカーブで預かっているのだという。

 今村の自宅に招かれて、69年もの、77年もの、84年ものなどの「鳥居平」を試飲させていただいた。今村の同級生が一緒だったが故の役得だった。いずれのワインもまろやかでふくよかな口当たりにもかかわらず、ほとばしるエネルギーを感じた。栓をあけてワイングラスに5分~10分ほど放置しておくと、半径2メートル程の範囲に芳醇な香りが強く漂うのだ。素晴らしいワインだ。今村によると「20年、30年と経てば2004年はこれらに匹敵するか、上回る可能性がある」という。

 来たときにワインを買う気はまったくなかったのに、帰るときには私は思わず2004年の「鳥居平」200本を注文していた。1本あたりの金額は最初に話があったときの2倍になっていた。おかげでその夏のボーナスは消えてしまったのだが。

 シャトー勝沼には100年を超えるワインも貯蔵されている。山梨県の勝沼には30を超えるワイナリーがあるが、このようなヴィンテージワインがあるのはここだけだという。次回以降、なぜ「鳥居平」で美味しいワインが誕生するのか、その秘密に迫る。(文中敬称略)

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