ジョージ・ソロス氏が英ポンドの下落を予測してバンク・オブ・イングランドを相手にポンドを売り、莫大な利益を上げてから20年。現在の欧州危機の状況は当時とは様変わりであるが、米国マネー・マネジャーは通貨、銀行株の行方などに様々なトレード戦略を練って好機を覗っていると、ロイターは報じている。
アダム・フィッシャー氏のコモンウェルス・オポチュニティ・キャピタル・ヘッジファンドは、資金の8割を欧州に投じており、ドイツ、オランダ、イタリア、スペインのソブリン債務を保有し逆張りポジションをとっている。
ユーロ圏を巡る状況は激しく変動するため、マネジャーは政治的風向きによってポジションの調整を迫られる。例えば、今年の初旬、ギリシャのユーロ離脱懸念はなくなったように見えたが、緊縮経済政策を主導した連立与党が惨敗した選挙の結果、ギリシャのユーロ離脱の可能性は大幅に高まっている。
ロイターによると、今夏にマーケットの大揺れを予想するフィッシャー氏は、国債への強気姿勢を後退させている。フィッシャー氏のファンドは4月までに8.8%上昇したが、この環境でリスクを乗り切るのは極めて難しいと考えているようだ。
パシフィック・インベストメント・マネジメントの元フォートフォリオ・マネジャーのブリンジョルフソン氏は、ギリシャの離脱に賭ける。欧州首脳陣がギリシャ政府を説得するのは並大抵ではないと考えているためだ。ロイターによると、同氏の7.5億ドルのヘッジファンドはユーロをショートし、今年2%上昇した。
通貨専門のメルク・インベストメントCEOのアクセル・メルク氏は、ギリシャとユーロ圏の問題の高まりで、メルク・ハード・カレンシーファンドのユーロを全額売った。ロイターによると、同ファンドは総額5.17億ドルで、今年2.29%上昇した。
ジョン・ポールソン氏は、欧州諸国の国債をショートし、ポールソン&カンパニーのポートフォリオ全体をヘッジしている。国債だけでなく、スペインやイタリアの銀行をショート(売り建て)しているものもいる。レイ・ダリオ氏は運用資産総額が約1200億ドル(約9兆4400億円)という世界最大のマクロヘッジファンドを築いた人物だ。彼のブリッジウォーター・アソシエイツは欧州のトレーディングで2011年に23%稼いだ。ダリオ氏によると、欧州銀行は現在、多額の負債を抱えてバランスシートを拡大できないし、債券の買い手も十分ではない。
ダニエル・ローブ氏のサード・ポイント・ファンドは、ポルトガルがユーロ圏の他の諸国よりも健全であるとの判断から第1四半期にポルトガル国債をロングした。ポルトガルの銀行はスペインよりも遥かに健全で、ポルトガル政府は積極的な労働改革を実施しているという。
欧州危機はヘッジファンド・マネジャーが新たなトレード戦略を生み出し、見識を広げる好機となっているようだ。