生活保護で無料のホテルと化した病院

社会保障の充実、すなわち増税?

 ここまで読んでくると医療扶助制度の存在自体が疑問に思えてくるかもしれない。例えば年金で生計を立てている高齢者や、生活保護は受給していないものの同程度の収入しかない方の場合は医療費を支払う必要があるのにどうして生活保護受給者は医療費を支払わなくても良いのか。

 その答えは生活保護法の中に存在する。


 生活保護法5章34条では、「医療扶助は現物給付によって行うものとする」と規定されている。つまり、必要とする医療は個人によっても差が大きいので、一律な金銭面での補助ではなく実際に診察や薬剤を提供する事で扶助しようというわけである。

 ちなみに生活扶助、住宅扶助、教育扶助などは地域によって額面に差があるものの金銭給付となっている。

 ひじょうに良く考えられた制度ではあるが、昭和25年に制定されてすでに半世紀以上。社会的弱者を守るはずのセーフティーネットが一部の利用者に甘えを生み、また制度自体を悪用する者も目立つようになってきた。

 福祉サービスの適正利用なくして、社会保障の充実は図れない。社会保障制度の維持に必要なのは増税だけではなく、制度そのものの改革なのかもしれない。

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