100年後に家宝になる腕時計 第一回

100年後の価値は中国人が決める?

 欲しがる人間がいなければ、家宝は文字通り門外不出の、家のなかだけの宝ということになる。美術工芸品や骨董の価値を決めるのは、その時もっとも経済力のあるグループだ。

 腕時計のオークションはいままでヨーロッパやアメリカの富裕層、コレクショナーやコノシュア(好事家)が牽引してきた。それが、事情はいうまでもないだろう、中国に力点が移りつつある。

 しかも中国の富裕層は、清朝の時代にエキゾティックなエナメル細工を施した中国向け懐中時計で一世を風靡したボヴェBovetを評価するなど、独自のブランド観を持っている。

 時計に限らずいまオークションで事前の内覧会の開催場所に選ばれる地は、東京よりは香港や上海が、遥かに頻度が高い。しかしそれも、現在だけの話である。100年後、世界の主役は誰なのかを、いま誰も断言はできないだろう。

 家宝になる腕時計は、100年先の名品である。未来の価値を決める基準は、さまざまな要素の重なりの上にある。

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