ダメな物は長期熟成してもダメ
「ここまで品質の高い日本ワインがあるのか」。
いくらいい土壌であっても、その年の気候によりぶどうの出来は左右される。「当たり年」というが、暑くて雨量が少ない年に質・量ともに最高のぶどうができる。それがヴィンテージワインなのである。
当たり年じゃない年のワインを長期熟成させても酢になるだけだ。今村英勇によると、「『鳥居平』でも普通の年のワインなら4~5年くらい寝かせたものが飲み頃」だという。
ヨーロッパなど海外にはヴィンテージチャートといって、かなり古くからの生産年、産地、赤・白などでワインの出来がわかるものがある。しかし日本にはない。日本のワインは早飲みタイプばかりだからである。
しかし、今村の家は初代から、良いワインができたら売らないで、相当程度の量を長期熟成させるという考えで取り組んできた。だからシャトー勝沼には103年物、105年物などのワインが現存する。それは醸造された当時のままの一升瓶に入って残っている。2代目も3代目も苦しくても売らなかったからだ。