すわ、到来!冷たい麺の季節!!

 ジャパニーズ・ソウルフードともいえる蕎麦や素麺はもちろんのこと、冷やし中華、冷やし坦々麺、冷やしラーメン、冷やし饂飩に韓国(盛岡もありますネ)冷麺、などなどなど。スルンと清涼感とともに喉元を通り抜ける、冷やっこい麺類が、日本人はとにかく好き。なかでもここのところ、とみに注目されているのが、年々、東京のイタリアンで進化する「冷たいパスタ」の数々だ。

コロンブスの卵的発想から生まれたパスタ


 かくいう私も、冷やしパスタにはめっぽう弱い。はじめの出あいは、20数年前の西麻布のリストランテ。キンと冷やされた白皿の上に、妖しくも黒光りするキャビアが小山となり、その下に隠れた冷製パスタ(カッペリーニでした)を引っぱりだして、無数の魚卵と絡めて口にしたのを覚えている。こんな和えソバみたいなパスタって、あり!?ひんやり、あっさりとしながらも、高級食材と一体化した華麗なる存在感。

 以降、夏が近づく頃ともなると、がぜん「冷たいパスタ」に食指が動く習性となった。フルーツトマト、鮎、桃、サクランボ……。さまざまな食材を使った冷製パスタが、ちまたでつぎつぎと流行し、かたっぱしから食べ歩いた。そして、巡りあったのが、麻布十番「イルマンジャーレ」の鵜野秀樹シェフが作るこの一皿。断トツのインパクトで冷パスタ愛好家たちを魅了する「生ハムと滋養卵を添えた冷製カルボナーラ トリュフ風味」だ。

 「既存の冷たいパスタと、似たり寄ったりのものを作っても意味がないと思いました」と鵜野シェフが話すように、これぞまさにコロンブスの卵的な発想で生まれた、エポックメイキングな冷やしパスタ。両若男女に愛される我らがカルボナーラを、大胆にも冷やし、巧みなアレンジを施して、まったく新しいバージョンに発展させた。

 独特なのは、その軽快感。鵜野流「冷カルボ」は定番カルボにつきものの、どっしりとした重さを払拭し、卵やチーズのまろやかな風味に包まれた、ヴィネガーの酸味が効かせてある。そこに重なるのが、妖艶濃厚なトリュフ香。品の良い爽やかさと、キケンな艶やかさが共存する冷製カルボナーラだ。

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