「日本にこんなワインがあったのか」~鳥居平物語~(4)

ぶどう造りとは百姓だ

 結婚後は夫婦で巨額の借財に耐え、努力を続けた結果、10年後には返済のメドがついた。 「この間も初代、2代目が造り、保存してきた年代物ワインは、できるだけ売却しなかった」(今村英勇)。今村の食いしばった歯茎の強さの上に100年を超えるワインが現存するのである。更にいえば、巨額の借財があったればこそ、脇道に逸れることなくワイン造りに精魂を傾けることができたともいえる。


ブラッククイーン
 今村英勇は「ぶどう造りは百姓」と、ある種の矜恃をもって語る。「ワイン造りはぶどう作り」だから、当初は鳥居平の地に適したワインにふさわしいぶどうの品種探しに打ち込んだ。赤ワインの代表的品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンなど様々な品種のぶどうを育てワインを造ってみた。

 試行錯誤の結果、行き着いたのが赤ワインはブラッククイーン種とマスカット・ベリーA種のブレンド、白は古くから勝沼で栽培されていた甲州種だった。ここに辿り着くまでになんと10年もの歳月を要している。

 今村のワイン造りを一言でいうと、“こだわり”と“思い込みの排除”にある。常識にとらわれないチャレンジ精神と置き換えてもいい。

 次回は、今村の”こだわり“と“思い込みの排除“を徹底するワイン造りについて。◆バックナンバー第3回「極上のワイン『鳥居平』誕生の秘密」

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