「日本にこんなワインがあったのか」~鳥居平物語~(5)

(第5回)「今村、こだわりのワイン造り」

経済ジャーナリスト 湯谷昇羊

ぶどう作りを制する者がワインを制す


今村英勇氏
 今村のワイン造りを一言でいうと、“こだわり”と“思い込みの排除”にある。「ワイン造りはぶどう作り、ぶどう作りは土作り」と考える今村は、徹底的に土を掘り起こして研究した。

 ワイン用ぶどうを栽培する土は、窒素・リン酸・カリの3要素だけではだめで、ワラや堆肥などの有機肥料が必要なのである。モグラがいる土がそうだ。モグラはみみずを食べ、みみずは土中の微生物により分解された腐植土を食べる。

 このような土地のぶどうには、根の太いごぼう根は出来ず、細かい毛のような毛細根が多く出来る。この毛細根により、微生物が繁殖するような土壌の栄養分やミネラル分を必死に吸収する。

 「毛細根のないぶどうはワイン用には向かない」(今村英勇)という。このように土やぶどうの根など、徹底的にこだわるからこそ「百姓」なのだ。

 今村の”思い込みの排除”は、ワイン用ぶどうの選定にも現れている。

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