リーマン破れて1000万馬券在り(競馬・秋華賞)

リーマン破たんから一転してこの世の春へ

 先日行われた、JRA(日本中央競馬会)の牝馬のGIレース・秋華賞で、重賞レース初の3連単1000万馬券が飛び出しましたが、この大波乱のドラマを先頭でゴールを駆け抜けたのがブラックエンブレムでした。何と、この馬のオーナー田原邦男氏は、リーマン・ブラザーズの元株式ディーラーで、現在は同社の経営破たんで無職。一度は失職の憂き目を見たオーナーにとって、この孝行娘の活躍が何よりの朗報となりました。

 「涙しながら歓喜したのは初めての経験。長年夢見ていた瞬間はこんなに素晴らしいものなのか。零細個人馬主だけど諦めずに、巡り合えた縁を大切にしてきて本当に良かったと思えた瞬間でした」(田原オーナーのブログから抜粋)

 当日のレース後に、ブログを更新しようと携帯電話でログインすると、そこにはすでに8000件を超える書き込みがあったそうです。今回繰り広げられた人間と馬のドラマが、日本中を巻き込む感動劇となりました。

元ヒルズ族『零細馬主』は毎週渋谷のWINSに通っていた

 田原オーナーは現在40歳。2002年に中央競馬の馬主資格を取得(地方競馬の馬主資格も保有)し、現在は合計13頭(共有馬含む)を所有しています。自らを『零細馬主』と称するとおり、この世界では若手で、ブラックエンブレムが初めての活躍馬となりました。
 
 競馬との関わりは、高崎高校時代に競馬好きな国語の教諭に影響されて興味を抱き、社会人になってからは、毎週末、場外馬券売り場「WIMS渋谷」に通い詰めたそうです。そして株式のディーラーとして成功し、競馬好きが高じて馬主資格を取得しました。かつては、六本木ヒルズにも居を構えたこともあるといいます。

オーナーとしての顔

 中央競馬の馬主資格は、資産と収入の面で大きく分けて次の2点のルールがあります。
(1)個人・法人馬主の代表者は、過去2年の所得が1800万円以上、資産9000万円以上 。
(2)組合馬主は、各組合員の過去2年の所得がそれぞれ1000万円以上。

 田原オーナーの収入や資産の状況は判らないものの、さすがにビッグレースにコンスタントに愛馬を送り込む大馬主とは違い「経済的にいつまで馬主を続けることができるかなと思いながら何とか6年が経ちました」と苦しい胸のうちをブログで吐露していたこともありました。
 
 競馬のリスクは無限大。何億円つぎ込んでも、デビューさえしないまま引退する場合もあります。田原オーナーはセリ市で馬を選ぶ時は、ベテラン馬主たちの盲点となる時間帯にリーズナブルな5000万円以下の馬を中心に狙っているようです。ある厩舎関係者によると、最近の金融系のオーナーの考え方は損をなるべく出さないような経営感覚で、昔のような道楽感覚の人とは一線を画するといいます。
 
 まさに一寸先は闇の世界。だからこそ金融マンらしく、リスク管理には敏感なのでしょう。

最高の孝行娘

 孝行娘ブラックエンブレムの名前は、田原オーナーが以前に所有していた同馬の姉ロイヤールハント(レース中に死亡)を追悼する意味で「黒い紋章」と命名されたそうです。亡き姉を立派に弔って見せました。
 
 またそれだけではなく、ブラックエンブレムは優勝賞金8900万円を獲得し、これで総獲得賞金は約1億6400万円。失職中のオーナーの危機を救い元気付けました。田原オーナーにとっては最高の孝行娘を持ったことが、何よりの幸せでしょう。

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