100年後に家宝になる腕時計 第三回

エントリーモデルの存在

 カルティエは英国王室御用達から、現在も王室メンバー御用達である。ブルガリは昔も今も世界のVIP級スター達の愛用品。そうしたブランドがつくる腕時計は、そもそもの条件が異なるのである。同じようなことが「エルメス」にも言えるだろう。

 馬具商から革製品全般に知名度を拡げたエルメスは腕時計に本腰を入れ、今日では腕時計の手練といっていい。最近では「モンブラン」の成功が水際立っている。言うまでもなく世界的な筆記具ブランドとしての知名度のトップにおり、一点ものや限定品の万年筆のスペシャルピースは家宝レベルである。そのブランドが1997年シーズンに腕時計界にデビューし、またたくまにトップ級に並び立った。

 これらのブランドに共通していえることは、極めてラインナップの幅が広いことだ。「エントリーモデル」という名で買い手を誘う、いうなれば普段使いの名品が、商品ラインアップのベースにある。

 ブランドのステイタスに比して、手が届きやすく見える腕時計だ。たとえばジュエラー系ブランドのエントリーモデルが採る数十万円の価格は、スイス製腕時計でいえば「アクセシブル・プロダクツ」の設定である。ジュエリーやバッグほどは気後れせずに着けられる品がラインアップされているといっていい。

 こうした“背伸びすれば手が届く”日常の名品から、100万円オーバーの「一生もの」時計へと、ラインアップは上に延びていく。

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