100年後に家宝になる腕時計 第三回

自社ムーブメント志向

 高級モデルでは、機械式のエクスクルーシブ(そのブランドが独占使用する)・ムーブメントを搭載する、もしくは自社製ムーブメントを搭載する方向が鮮明だ。すなわち、ムーブメント自体にも希少性を持たせる。これが、スイス腕時計界最新のトレンドである「マニュファクチュール」志向の特徴である。

 マニュファクチュールとはそもそも、ムーブメントから自社調達が可能な一貫生産メーカーを指す時計用語である。高級時計ブランドが高品質のムーブメント調達に苦労する果てに、力があるブランドはマニュファクチュール化を選択した。現在は「カルティエ」も「ブルガリ」もマニュファクチュールである。

 エルメスは機械式ムーブメントの名門ヴォーシェ社に資本参加し、エルメスのためだけのエクスクルーシブ・ムーブメントを手にした。

 象徴的なのはモンブランである。自身がマニュファクチュール化の一方、独立マニュファクチュールの老舗「ミネルバ」社を傘下にし、ハイエンドのモデルはミネルバ製造「コレクション ヴィルレ 1858」に集中させた。

 こうした、本当に価値あるレベルの腕時計には、発表されたものの日本に正式入荷しないものも多数ある。しかし一方、百貨店で開催されるウォッチフェアなどで「参考商品」の扱いで展示されることは珍しくない。

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