男女の仲を深めるなら、初秋の鮎!?

 朝夕、ちょっぴり肌寒さを感じる今日このごろ。気分は炎天下のBBQや、枝豆片手のビアガーデンではなく、しっとりと男女の仲を深められる、そんな一軒を求めはじめる。となればイチオシなのが、このお店。昭和38年に創業した、新橋の鮎専門店「鮎正」である。

鮎の意外性


 鮎といえば、香りが強く、骨が柔らかいので、丸ごと食べやすい「初夏」の若鮎。もしくは、脂の乗り、旨味が増す「盛夏」の魚と思われがちだが、あえて「初秋」にこの川魚を目指すには訳がある。

 第1には意外性。たとえば、レストランに通い慣れた女性を誘うのにも「落ち鮎(秋の鮎)を食べに行こう!」などとアプローチすれば、いかにもツウっぽい風情が漂って、非常によろしい。万人がこぞって鮎を求める「走り」(初物が高値で出回るころ)や「旬」をハズし、過ぎゆく季節を惜しむように「名残り」(シーズンもそろそろ終わりのころ)の食材にスポットを当てるあたりも、オトナな感じ。


子うるか
 第2には期間限定の美味しさ。子持ちのメスが持つ食感は、毎年9月末~10月終わりまでしか味わえないもの。さらに、そのメスの卵とオスの精巣を塩で漬けた「子ウルカ」は、知る人ぞ知る珍味なのだ。ほんのりと黄味色がかった、綿雪のようなこの逸品。ねっとりとまとわりつく舌触りと、まったりとしたコクが、鮎好きならずともクセになる。酒肴によし、ゴハンのお伴にもよし。この味を「ぜひ、一緒に」と、誘い文句にしてもいいだろう。

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