パナソニック「追い出し部屋」報道はメディアによる復讐劇の狼煙

「どんどんメディアに叩いてほしい」


左から中村氏と大坪氏
 パナの場合、この“おじいさん”とは、兵庫・尼崎のプラズマ工場に巨額投資をし、今日の赤字の根本原因をつくった中村邦夫相談役(前々社長)を指していることは明白である。記事は署名で、朝日社内でも有名なO記者。2002年秋、週刊誌「AERA」に在籍し、当時、松下電器産業(現パナソニック)社長だった中村氏の改革について「松下『改革』でV字回復のウソ」という記事を書いた。まっとうな分析記事だったのだが、見出しは確かに行き過ぎ感があった。

 この記事に対して、松下電器は抗議の内容証明を送付し、朝日への広告出稿をストップ。これに対し、朝日が謝罪し、「AERA」の後日号で謝罪文を掲載、編集長を異動させ、全面降伏した。これが、「朝日、土下座事件」としてメディアに広く知られている。

 この一件に味をしめたのが松下側で、以来、「中村がいやがります」「広告、止まるかもしれませんよ」という台詞を、現広告トップのK氏、前トップのM氏が繰り返し、メディアに圧力をかけ続けた。10年の悪行のツケは大きい。「赤字でいい気味だ」とパナのことを公然と批判する記者はあまりに多い。

 さて、「追い出し部屋」について、パナの別の女性社員(48)。「うちにも業務なんとかという部署として存在します」と証言する。「春にはいまの9つの事業ドメインが4に再編され、わたしの部署がなくなるかもしれない。そしたら、『追い出し部屋』行きかも」と不安を隠さない。

 メディアのパナに対する報道には、「事実なので仕方ない」と擁護し、「悪いのはこんな会社にした経営幹部でしょう」と話す。「前社長でいまの会長の大坪文雄さんなんて、7000億円以上の赤字にした後に会長に“昇格”し、しかも1億円を超える報酬だった。大坪さんと中村さんが辞めるまで、どんどんメディアに叩いてほしい」とも。

 社内から批判が噴出し広告の力も衰えたパナ。これからも厳しい記事が続きそうだ。

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