「缶空気」を売る
まさかの商売だが、始めたのは大富豪の陳光標(ちん・こうひょう)氏だ。東日本大震災の直後には、いち早く東北に入り、救援物資を運搬したり、社会貢献に対して行動力を持つ大富豪であると知られている。
もちろん、事態はそれほど深刻であるということだ。通行中の市民が防護マスクを着用するという光景も見られるほどだが、北京の空気中の発癌性物質の濃度は、1立方平方メートルあたり、900マイクログラムと、環境基準の約20倍以上という危険なレベルにまで達していた。これを受けた政府は、子供の屋外への外出を避けるよう警告を発したり、数百メートル先の視界が遮られることから主要な幹線道路も封鎖したり、あるいは、大気汚染の原因となる物質を排出しているとされる工場を運転停止にさせるなどしている。
金のためではない
陳光標氏は、オーストラリアのフェアファクス・メディアの取材に対して「まったく冗談ではなくなってしまった。われわれの子供や孫の世代で、将来もガスマスクを着用しなくてはならない時代も来るかもしれない」と語っている。
それが、「缶空気」の販売。チベットの新鮮な空気が入っているというもので、一つあたり5元で販売。「お金のためではない」としているが、それがどれだけの需要があるのかは疑問だ。
陳氏は、環境と自身の健康のために、自転車通勤を毎日実践していることでも知られる。これまでにも「子孫のためにきれいな空気を残したい」と語っていた。自身が亡くなった後は、500億円以上とされる資産をすべて寄付することを公言している。
ただ、民間人の最後の抵抗という感は否めず、あとは国家に責任ある行動が必要だ。ちなみに、30日から北京の天気は「雨」だといい、これで幾分は今の汚染が緩和するのだとか…。いや、もっと本気の取り組みをしてもらいたいところだ。