「さっさと死ねるように」は正しいか? 終末期医療の課題

治療よりもQOL

 「さっさと死ねるように」発言に対して、反感をもつ人も多い一方、内心共感している人も多いのではないだろうか。日本の終末期医療を担う、日本老年医学会の立場表明に興味深い記載がある。

 「過少でも過剰でもない適切な医療、および残された期間の生活の質(QOL)を大切にする医療およびケアが『最善の医療およびケア』である」

 「QOLの高い状態とは、主観的な幸福感や満足感が高く、身体的に快適な(苦痛が少ない)状態」

 財政的見解を抜きにしても、本人の意志に反して身体的に苦痛を伴う医療/延命措置を行う事が、望ましい終末期医療ではないと専門家も言っているのである。ただ、麻生氏の発言からうかがうことができるように、現状では本人の意思を十分に反映する事なく、苦痛を伴う終末期医療が行われている現状がある。

 患者やその家族からすると、肝心の終末期医療が必要になった時には患者本人がしっかりと意思表示が出来ない状態になっている事が多いという現状がまず挙げられる。また、残される家族からすると、なんとか長生きして欲しいという願望があるのも理解できる。また、延命治療の中止という判断をする事自体も苦痛を伴うものである。

 そのため、患者の意志や苦痛よりも家族の意思が反映されて改善の見込みのない延命措置が行われている光景をよく目にする。

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