第4回 PDCA名目に激増した会議と朝礼に、社員は疲労困憊
業績が悪化すると会議が増えるのは普遍の現象である。業務運営の引き締めや管理の徹底を意図して増えるのだが、その根底は、不安心理が群れたがるという習性を呼び起こしているのだ。だが会議の増加は、いつしか会議を目的として会議を中心に仕事が廻るという倒錯した現象を定着させてしまう。ある中堅人材紹介会社がそうだった。
(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)
事業部、部、課ごとにも会議
2年連続で経常赤字を計上したこの会社では、その次年度4月の経営会議で、各部門に「会議体系を構築せよ」という方針が打ち出された。経営の要諦はPDCAのサイクルを廻すことで、そのためには会議の体系化が最適の手段である。会議の体系化とは、PDCAを年次、半期、四半期、月次、週次で廻す仕組みである。それが、方針の説明だった。
そして方針が出された1週間後に、事業部、部、課ごとに年次、半期、四半期、月次、週次ごとの開催日時、さらに朝礼の開催日時を付けて年間スケジュール表を作成し、社長室に提出した。その翌週から実行に移されたのだった。
どの会議でも、前日までに各部署の責任者が業務項目ごとの目標と実績の差異分析、新たな施策をフォーマットに記入して、業務管理担当者に送信する。会議の場では各責任者が記入した内容を報告し、目標未達成の場合は「申し訳ございません」と謝罪することがならわしになっていた。
ひと通り報告が終わると、会議を統括する上席者が重点テーマに関する意見を集め、責任者たちに指示を出し、各人は次回会議までの目標と施策を発表する。この間、およそ2時間。これだけなら平均的な時間だが、元幹部社員は弊害を指摘した。
「フォーマット作成に1時間近くかかるため、会議が増えたことで、本来の業務に支障が出てしまった。営業に出かける時間がどんどん削られていったのです」
この状況に拍車をかけたのが「マネジメントデー」と呼ぶ毎月第一営業日だった。