破綻するブラック企業の楽しみ方(4)

毎月第一営業日は「開店休業」に

 この日は、全社が部単位で午前9時から11時に全体会議で前月の振り返りを行い、部長が各課に検討事項を指示し、各課は終日を討議に費やして、午後5時から開かれる全体会議で当月の施策を発表する。昼食をのぞいて外出は禁じられ、取引先からの急な呼び出しが発生した場合には、役員の承認が義務づけられた。

 こうして毎月第一営業日は事実上の休業状態になったが、それを認識する社員は少数派だった。会議ラッシュが組織全体を麻痺させ、社長から新入社員までの大半が、本末転倒の状況に鈍感になってしまったのだ。

 会議へのこだわりは、さらに続く。各事業部と各部で、会長と社長が出席する会議の前日には必ず「会長対策会議」「社長対策会議」が開かれ、突っ込まれそうな事項は何か、どんな角度から突っ込んできそうか、それに対してどう答えるのかが入念に話し合われた。会長や社長の指示を業務に反映させることよりも、会議を無事に乗り切ることが優先されたのだった。

 群れたがる心理は朝礼にも現われた。この会社では毎週月曜日、午前8時から事業部マネージャー朝礼、9時から全社朝礼、10時から事業部全体朝礼、11時から部朝礼というように、マネージャー職以上は4回、一般社員は3回の朝礼に出席を義務づけられた。

1 2 3
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる