破綻するブラック企業の楽しみ方(5)

京都からの新幹線通勤

 その役員は都内の本社勤務だが、自宅は京都にあり、月曜日から金曜日までは都内のホテルに宿泊し、金曜日に京都に戻って月曜日に東京に移動するという生活だった。10年近くもの間、この往復をつづけていた。


金閣寺
 ホテル暮らしなので、単身赴任ではなく出張扱いだった。グリーン車使用の新幹線往復料金、ホテル代、さらに1泊につき6000円の出張手当。疑問に思った社員が調べ上げたところ、毎月の経費は50万円以上にのぼることが判明し、あっという間に一部の社員に知れわたる。

 生活の実態は単身赴任ではないか。出張経費で正社員を1人、契約社員なら3人も雇えるのに、なぜ単身赴任に切り替え、経費削減に協力しないのか。

 率先垂範というリーダーの規範を抱いていないのか。部下が上司に進言するわけにはいかず、本人の気づきを待つ以外になかったが、それはかなわなかった。そして、この役員は、面従腹背の対象へと堕ちていった。

 こうした伏線があって、突然、全社メールで出張規程の改定が通知される。

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