破綻するブラック企業の楽しみ方(6)

社内でも秘密の逢瀬が大っぴらに


 「上司に感情移入していますか?」「我が社のミッションに従って主体的に生きていますか?」。部長職以上が担当部門全員に送信するメールの冒頭に、そんな一文が添えられるようになったのだ。

 こうした取り組みにのめり込む社員もいるが、嫌悪感をいだく社員は、割り切れる限度を超えると退職にむかう。そして当事者意識を失った社員の多くが、温度差はあれ、この会社への勤務はそう長くないだろうと考えるようになった。

 一部の社員は勤務時間中に堂々と転職サイトを検索したり、人材紹介会社の情報を交換したりするようになる。上司に罵倒されるなどして腹にイチモツをいだく社員の一部には、2ちゃんねるに書き込む者もいた。そもそもネットへの書き込みなどは低劣な所業にすぎない。彼らはそう認識していたのだが、憂さ晴らしに走るあまり、次第に真っ当な感覚が麻痺してしまったのだ。

 さらに顧客リストを持ち出して退職する者、営業マニュアルをネットで販売して小遣いを稼ぐ者などが相次ぎ、組織のタガが完全にはずれてしまう。パワハラ、セクハラの横行だけでなく、秘して逢瀬を重ねていた男女が大っぴらに振舞い、一部の女性幹部などは部下の男性を手当たり次第いざなうようになったのだった。

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