日本では1000億円超の過去最大のライツ・イシューを実施するJトラスト。最大の焦点でもあるのは、発行済み株式の約5割を保有する藤澤信義社長(43)が総額で約540億円もの権利行使を行うかどうか。個人で用意する金額としては大バクチとも言われるが、そうした注目が集まる中で開催した24日の投資家向け説明会で「自分のことより会社の成長を優先させる」と語り、安定株主への譲渡や株を担保にしても借入などを行うべく交渉を行っていることを明らかにした。
全体で75%以上はいける?
まず、ライツ・イシューとは割当増資の一つの手段で、全部の既存株主に対して時価よりも低い価格で新株予約権を無償で交付するというもの。
藤澤氏が保有全株分の権利を行使しようとするならば、莫大な資金が必要となる。藤澤氏の保有株は約3005万株で、発行済み株式総数は6242万株の約5割にあたる。権利行使価格が1株=1800円のため、3005万株を行使したなら総額は約540億円となる。
日本では過去に5例あるのだが、2010年に行われたタカラレーベンでは、95.7%の株式が権利行使された。調達資金は47億円以上。そして、権利行使価格は300円だったが、今年5月には2000円を超えるなど、株価は7倍を超えるという前例もある。
ただし、今回は最大で1000億円以上になるだけに、過去に例を見ない規模であり、藤澤氏も「試金石」だとしている。自身がすべて行使して約50%、残りの株主の半分が行使してくれれば全体で約75%にはなる、との予測も語っている。
事業規模拡大というある種の賭けに出るわけだが、金融業界では東大医学部卒という異色の経歴の持ち主ながら、なかなかのギャンブラー体質としても知られる。