産科医が垣間 診る“女性手帳”の中身

高齢出産は知識不足から来る?

 同会合では「妊娠・出産支援」の主な方策の一つとして「妊娠・出産に関する知識の普及、教育」 が掲げられており、その具体的施策として「生命(いのち)と女性の手帳(愛称別途検討)」の作成・配布を挙げている。この手帳を利用して「妊娠適齢期等妊娠・出産知識や支援情報等を記載するとともに、自らの健康データ等を記録 」するとしている。


「少子化危機突破タスクフォース」HPより
 なるほど この“女性手帳”により「妊娠適齢期等」の「妊娠・出産に関する知識の普及、教育」をすることで高齢出産の増加傾向に対して歯止めをかけたい! という事なのだろうと推測できる。

 ここで一つの素朴な疑問が脳裏をよぎる。

 「高齢出産が増えているのは、女性の妊娠・出産に関する知識が低下あるいは不足しているからなのか」

 自分としては高齢出産が増えている現状を、今までお会いした患者さん達の話を統合するに以下の3タイプに分けられるのではないかと勝手ながら推測している。

【1】20代での妊娠が望ましいことが分かっていても産休・育休 を取得することが難しいキャリアウーマンタイプ
【2】純粋に良い結婚相手が見つかったのが30代後半という大器晩成タイプ
【3】30代後半~40代でも妊娠・出産に影響がないでしょと思っている楽天家タイプ

“女性手帳”はこの【3】に該当する女性には有効に違いない。ただ、この【3】に該当するある意味 呑気な女性は “オヤジ” が考えるほど多くないのではないかと自分は感じるのだが、いかがであろう。

 恐らくは政府としては各種アンケート結果を基に【3】のような女性が諸外国と比較して多いと判断しているのだと思うが、20代後半くらいの年代になると皆年齢を多少なりとも意識して焦燥感をもっているのではないかと思う。

 ましてや仕事、結婚、妊娠出産、子育てなどご自身のキャリアパスについて真剣に悩み、色々勉強されている【1】や【2】に該当する女性から今回の“女性手帳”が反感を買うのは致し方ないところなのだろう。

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